子どもの暴言や暴力には、理由があります。
認めてもらえたという実感がないと、自分という存在に自信がないと、暴言や暴力という二次障害が起きやすくなります。
自分に自信が持てない子どもさん、暴言や暴力が起きやすい子どもさんは、手先が不器用でモタモタしたり、情報の通りに楽に行動できないで、いつも不全感を持っている子どもさんです。
今できていない行動より手前のできている行動に声をかけよう
努力しても理想通りにできない、それは自信をなくし、つらく悲しいことだと思います。
着替えが遅くても、「まあ、いいか」、あなたは食事には集中しているね。
絵が下手でも、「まあ、いいか」、あなたはブロックで車を作れるね。
などと、苦手なことの他の、得意なこと認められると、心のバランスも取れます。
保護者も先生も、子育てや教育に一生懸命で、できないことに注目しやすく、できるようにさせたいという想いが、強すぎる人がいます。
発達性協調運動障害が疑われるような、不器用なお子さんは、苦手なことに着目して出来るようにさせようと考えるのではなく、できていることを認めて、褒めて、できていることをさらに伸ばすと良いです。
それには、今できていないことを取り上げて、言葉をかけるのではなく、今要求されている行動の、一つ手前、二つ手前を認めて、声を掛けるようにします。
認められると、遅れながらも、今要求されている行動に、取りかかりやすくなります。
次の授業の教科書を出してから遊ぶクラスルール
例えば、学校で、休み時間には、次の授業の教科書ノートを机の上に出してから遊んで良い、という「クラスルール」があるとします。
次の授業という先のことを考えて、準備行動をとってから、遊ぶという、行動の逆算の教育ですね。
ADHD や自閉スペクトラムなどの発達障害のある子どもたちは、今と言う瞬時・瞬間に生きているので、先を見通した逆算行動が苦手です。
そこでクラスルールは、先生の音声指示だけでなく、黒板に、写真・絵・文字などの、消えないルールの掲示が必要となります。
それが、視覚指示、消えない指示、特別支援教育の合理的配慮、と呼ばれます。
授業の終わりの挨拶の時に、先生がその絵カードを貼りだして、「次の授業準備をしてから、休み時間です。はい皆さんもどうぞ言って。」と、復唱させるといいですね。
それでも、授業準備ができなくて、休み時間に移動しようとした子どもに気付いたら、「〇〇くん、終わりの挨拶ができたね。」「次はどうするんだっけ?」と絵カードを差し出して促します。
準備の手前の行動を言葉で認める
あるいは、休み時間が終わって、子どもたちが戻ってきて、1人2人机の上に次の授業準備ができていない子どもさんを見かけたら、先生はどうするか?
「〇〇くん準備がまだだよ」と、準備ができていないことを第一声で指摘するのではなく、「休み時間楽しかった?」「チャイムの前に戻れたね」「時間に戻れたね」「着席できてるね」と、できている行動を認めて褒めます。
そして先生の胸の前で、教科書を見せて、指さして、「頼むね」と言います。
褒める時には音声を使い、注意するときは可能な限り音声を控えて、実物で視覚的に促します。
認めるときは音声、遅れた行動を促す時は、実物・身振り・指さし・先生の接近などを使います。
「朝ごはんを食べたくない」にも共感の言葉を優先する
朝、子どもがグダグダして起きない時は、その手前の「よく眠れたね」に、声をかけ
朝ごはんを食べたがらない時は、プロテイン牛乳でも、果物ジュースでも、お豆腐プリンでも、ポテトフライでも、口にしやすいもので良いです。
「学校へ行ってから、お腹が空くかもしれないけれど、きょうは給食まで頑張ってみてね。」と、起こしたその場では食べないことに共感すると、起きて着替えて、食べることもあります。
「学校へ行ってから、お腹がすいた時に、先生に聞いて、保健室で食べてね。」とSOYJOY やプロテインバー、ウイダーinゼリーを見せても良いでしょう。
「食べたくない」という子どもの言い分を否定せずに共感し、保護者が、子どもに朝ごはんを食べて欲しい理想を押し付けないようにすると、子どもは思い直して食べる気持ちになります。
ベッドや布団では、食べる気持ちが起きないが、着替えが済んで、玄関に出る頃には、何か一口食べられるかもしれないので、玄関で、冷めた味噌汁や卵焼きでも良いと思います。
子どもの気持ちを認める、共感することが、子どもを素直にさせます。
朝、エンジンがかかりにくい子どもの気持ちを認めず、「栄養」を押し付ければ、否定された子どもは朝からイライラし、空腹のままイライラすれば、学校でも荒れやすく切れやすいです。
学校で、「先生に叱られた」と帰ってきたら、「そうか、お母さんと朝ごはん食べる食べないで言い合って、お腹もすいて、イライラしたのかもね。」と原因に共感してから、本人の理由や気持ちを聞きます。
子どもも、頭ごなしに叱られず、お母さんがイライラに共感してくれると、理由を話す気になります。
子どもの気持ちを否定せず、味方になり、共感すれば、暴言や暴力を防げます。
ゲームをやめず宿題をしないときも共感や共有を優先する
宿題に取り掛からない時も、手前の行動に声をかけます。
「学校で6時間頑張ってきたね、連絡帳を書いてきたね、プリントも持ち帰れたね、学校で1日マスクをしていられたんだね、給食は美味しかった?」と、出来ていることを認める言葉をかけ、「夕ご飯の後に、一緒に、皿洗いと宿題をしよう。」などと予告します。
今、夢中になってしているゲームを「いつまでやってるの!」と取り上げれば、イライラや暴言暴力のきっかけになってしまいます。
「7時から夕ご飯だよ」「あと10分で夕ご飯だよ」などの、予告にとどめておく方が良いです。
宿題は難しくて一人ではできず、ゲームは一人でできて楽しいから、いつまでもやりたいのです。
誰でも、楽にできることをやりたがります。
共感の声かけは、「くり上がりくり下がり、難しいもんね。」「ゲーム、得意で楽しいもんね」などです。
子どもの夕ご飯が済んだら、子どもがゲームを再開しないうちに、夕食のテーブルで、保護者は夕ご飯を食べながら、子どもの宿題を見てあげてください。
保護者の夕ご飯がゆっくりできないと思いますが、ゲーム・夕ご飯・宿題を区切ろうと思ったら、このような保護者の協力が1~2年は必要です。
お手伝いで時間を共有し手伝いに感謝して自信を持たせよう
宿題は学童でしてきてあれば、子どもがゲームを再開しないうちに、夕食のテーブルで、音読を聞かせてもらい、学校であったこと話してもらい、保護者が食べ終わるのを待って、一緒に食器洗いや風呂洗いをして、子どものお手伝いに対して言葉で感謝してください。
ゲームばかりしている子どもさんでも、一緒に夕食をとり、音読を聞かせてもらい、お手伝いをしてもらい、認める言葉をかけられれば、親子関係は上等です。
保護者はどうしても、子どもがまだしていないこと、取り掛かっていないことに、声をかけがちです。
気持ちが弱くて内向的な引っ込み思案の子どもさんも、強がりで外交的なイライラしやすい子どもさんも、自分に自信がないということでは、弱さは同じです。
不器用な子どもさん、自信のない子どもさん、イライラしやすい子どもさん、カッとしやすい子どもさんほど、すでにしたこと、すでにできていることに、声をかけましょう。
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