病院小児科の発達相談に、国語の教科書が読めない、ひらがなやカタカナが書けない、繰り上がり繰り下がりの計算ができない、という子どもさんが見えます。
学校で使っている、国語・算数の教科書とノート、漢字練習帳と連絡帳、漢字計算コンテストプリント、4~5教科のテストプリントなどを持参してもらい、見せてもらいます。
苦労を分析するための検査
学習方法の相談だけでなく、読み書き計算の発達年齢を知りたいという希望がある場合には、知能検査➡読み書きスクリーニング検査➡視知覚発達検査などを行ないます。
検査結果は、ご家族に結果を郵送、あるいは次回の予約時に、口頭で説明します。
小児科の療育に、毎月1~2回通って来る方もいます。
それでは、家庭学習や、学校の放課後および通級指導教室の個別学習で、読み書き計算を楽しく学習する方法と教材を紹介します。
まずは、読む学習の紹介からです。
読む学習 位置と運動で覚えるタイル50音表 誘い方
「あぬめ」「ねれわ」「はほ」など、似ている文字を記憶するのが苦手な子どもさんには、ひらがなタイル50音表で、位置の手がかりを与えて学習します。
手の運動で収めていく教材の、運動感覚を子どもは喜んで、取りかかってくれます。
50音表の枠ごと、子どものそばまで持って行って、見せるといいです。
1枚文字タイルを渡して入れてもらい、「机でやろう」と、50音表を半分持たせて誘います。
子どもの手に教材を持たせて、子どもの手をふさぐと、子どもはそれを処理しようとするものです。
人間の原始的な記憶が位置の記憶だから、不動の位置を手がかりに記憶します。
位置の手がかりと、タイル文字を運んでくる運動が、記憶を助けます。
「これはここだ!」と言う、確定を学習します。
プリントやボール紙では得られない、タイルの重みの確定の感覚です。
行ごとに文字合わせをする
1.一番初めは、タイルを指で押さえながら、行ごとに読む練習をしましょう。
2.次に、行ごとにひらがなタイルを重ね合わせていく学習に、移ります。
タイルの下には、タイルと同じ文字が貼り付けてあります。
1行ずつ、「あ」から順番に、タイル文字の重ね合わせをします。
1行5枚のタイルを、50音表の枠の右端か上段に、並べてあげてください。
一番最初は、5文字をア段から順序良く並べてやり、2回目は下の画像のように、似ている「あお」「うえ」を比較しやすいように並べ、3回目はランダムに並べます。
読む学習が苦手な子どもさんは、初め、目だけで文字を探して、枠に順番におさめることだけで、一生懸命です。
目だけの仕事がうまくなったら、50音表の文字を1字ずつ読んで、上から順番に、タイルの文字を探して、枠に収めます。
音声で言いながら文字を重ね合わせる
①50音表の文字「あ」を見て、➁文字「あ」を読んで、③目と手で「あ」のタイルを探して、④運動でタイル文字を枠に収める。
これだけで結構、複雑な仕事です。
なんでこんな簡単なことができないのか?と見るか、すごい複雑な仕事をやっているんだなぁと見るかで、子どもと大人の関係は変わってきます。
目と音声と手の、複雑な行動計画の処理を、一生懸命やっているんだな、疲れるだろうな、頑張っているね、そういう敬意は、子どもに伝わります。
言いながら探す、読みながら探す、という2つの仕事が子どもに負担であれば、大人が「読み」を分担してあげてください。
1行ずつだけ見えるように、画用紙やボール紙などで他行を隠しても、見やすくなります。
ア段から順番に探すには 枠の文字を指差すと文字の記憶登録を助ける
枠の文字を、「あ・い・う・え・お」と順番に指さして、こどもの視線を手伝っても良いです。
子どもが左手の人差し指で、「あ」から順番に下方へたどり、子どもが右手でタイルを探しても良いです。
指差しのような運動は、記憶登録を助けるのに重要です。
一覧の表で見ると、似ている文字も、「あ」は上の方で、「ぬ」は真ん中へんで、「め」は左の方だなと、位置で弁別しやすくなります。
教科書の表だけで記憶できない子どもには、①50音表の位置の手がかり、➁タイルを動かす運動、③何かしらの中継ぎ信号=「わは端っこだな」などのつぶやき言葉、が必要なのです。
タイルは、子どもの触覚に丁度いい重みがあります。
タイル以外のひらがな50音表
くもんには、磁石式の50音表があります。
磁石やタイルを投げて危険な子どもさんには、木製やボール紙の市販品もあります。
ひらがな文字50音の、重ね合わせが上手になったら、最終的には、見本の文字がない所へ、ひらがな50音を並べられると、その子の脳の中に50音表が完成したことになります。
プリントの右上にある小さな50音表をヒントに、タイルなどで50音を並べます。
「い・く・こ・し・つ・て・の・へ・り」などの一筆書きで書ける文字は、あらかじめタイルを取り除いておいて、「空欄のところを書いてみよう」と勧めると、簡単な文字は書く行動が起きやすいです。
「書いて完成したね」と認めてください。
大型の50音表になりますが、市販品によくある積み木の50音を、ベニヤ板と角材で枠を工作すると、以下のようになります。
iPad に「かなトーク」をダウンロードして、タブレット、50音表で単語を構成する
学校から配布されている iPad や Chromebook 、タブレットなどに、音声発声型意思伝達アプリ「かなトーク」をダウンロードします。
この50音表で、単語作りをすると、文字を押すたびに「い」「ぬ」と発声してくれるので、子どもは文字を探して押すだけで良くなり、文字探しと同時に音声を出す負担が減って、楽しいです。
文字探しと音声化の2つの仕事を同時にするのが難しい子どもたちにとって、機械が1つを負担してくれます。
我々も、50音タイルの教材を工作する手間が省けて、便利です。
タイル文字の見本合わせよりも、触覚運動は小さくなりますが、指でタブレットを触ることで、子どもの触覚運動も保証されます。
濁音と半濁音25字、促音と長音、拗音33字
濁音と半濁音25字、促音と長音、拗音33字についても、下の画像のようなタイル表で、①読みと、➁文字の重ね合わせを学習します。
表に収めることが上手になったら、単語作りに移ります。
似ている単語を 脳の外で 同時提示で見比べて照合する
清音・濁音・半濁音の区別が難しい子どもには、比較照合しやすい同時提示で出題します。
例えば、以下のようなプリントです。
下段に絵があることによって、上段の似ているひらがなを、読みやすくなります。
文字を読むわけですが、文字から音が出にくいので、文字➡絵➡読みの音と、絵が中継ぎになって、似ている文字を分けて読みます。
正解するように、うまくいくように、覚えやすいように、大人が手伝うと、子どもは注意深くなり、わかると集中し、できると意欲的になります。
カタカナ タイル50音表
同様にしてカタカナも、清音・濁音・半濁音、促音と長音、拗音を、50音表タイルで学習します。
カタカナの重ね合わせが、1行ずつ、5行ずつ、10行全て、楽になったら、ひらがなと同様に「マインクラフト」などと単語作りをします。
見本の単語カードを見せて、それに合わせて並べて作ると良いです。
文字を並べる枠があれば、一層良いです。
枠の工作は、結構時間がかかるので、太マジックで、はっきりとしたマス目を、ボール紙やダンボールに書いてあげて、そこに単語作りをするのも良いでしょう。
「かなトーク」には、カタカナも、数字もあります。
国語その他の教科書にスラッシュ線を入れる
読むことが苦手な子どもさんにとっては、ひらがなが3文字以上続くと読みにくくなります。
①文字の形を見分けること、➁単語の意味を取ること、③相手に伝わるイントネーションで音にすること、この3つが滑らかに起きないと、読み方がたどたどしくなります。
1年生の教科書のように1マス空いて、分かち 書き に なって いる 文は 読みやすい です。
ひらがなは、3文字以上続くとまとまり読みが難しくなるので、意味が区切れる2文字か3文字で、スラッシュ/線を/入れて/やると/読み/やすく/なります。
音読を助けるデイジー教科書
耳から聞いて、読みを助ける教科書、デイジー教科書を、学校や教育委員会で導入してもらってください。
学校から配布された iPad や Chromebook に、ダウンロードできます。
デイジー教科書の導入が決まったら、学校の先生にダウンロードしてもらってください。
個人でも、該当学年のデイジー教科書を、年間3000円で申し込めます。
ルビ振りがしてあり、音読の箇所が黄色線で、表示されます。
読みの速さも、ピッチを変えられます。
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