6歳の男の子の育児に悩むお母さんから、育児相談がありました。
3人の子育てに奮闘するお母さんです。
子どもさんは、待合室から診察室まで移動する間に、不安げにお母さんの手を取って張り付いている一方で、診察室の椅子に座ったとたん、もじもじガタガタと動き始めました。
相談始めの5分間でしたが、子どもさんのようすから、「お母さん、動きの激しい子育てに苦労していて、相談に来て下さったんですね」と、声をかけると、お母さんの目から涙があふれます。
育児に悩む若いお母さんに、以下の4つをお話ししました。
1.男性と女性の脳に性差があること
2.体重が重くなる5年生ごろ、男の子の多動な動きも落ち着くこと
3.「何々しなさい」「何々して」と、まだ起きていない先のことをしつけようとするより、すでに事実となったことに「何々したね」「何々やったね」とたくさん声をかけ、事実を認めて共有すること
4.そうすると、嵐のような激しい動きに、ガミガミと否定語を使わなくてよくなります、と話しました。
お母さんの表情が、明るくなります。
脳に性差がある
お母さんの質問に答えながら、以下のように話しました。
保育園の年長さんの女の子はおしゃべりで、静かに絵本を読んだり、お絵かきをしたりが上手です。
家でお母さんのお手伝いをしてくれたり、スーパーでもお母さんのそばでお買い物に歩いて付き合ってくれます。
お母さんは、女の子と共感し合いながら、楽しい買い物ができます。
穏やかな静かな買い物、憧れますね。
お母さんの育児を悩ませる男の子は、伝達なしに、スーパーで見たいものの方向に走っていってしまいます。
お母さんはスーパーで子どもに「走らない」「触らない」と、否定語の「何々しない」を一生懸命声かけします。
家から一歩出ると、スーパーで迷惑にならないか、道路で迷惑にならないか、お母さんはピリピリと社会常識を伝達します。
そしていつも、「私は子どもを叱ってばかり」と、お母さんは自分を責めるのです。
嵐のような男の子の激しい動きに、ついていく女性のお母さんは大変です。
「これは脳の性差による行動の違いである、女性の私にこの激しい動きは理解できない、そう思うと少し楽ですよ。」とお母さんに伝えると、お母さんは少し楽になった表情に見えます。
第二次性徴期には多動な動きも落ち着く
中学校の教室に行くと、皆、落ち着いて座っています。
うろちょろする人はいません。
子どもは5歳で身体が完成すると、6~7歳が一番多動です。
動きたくて、できることをやってみたくてたまりません。
男の子は、特にそうです。
そばに行って、手で触ってみたいのです。
男の子がレゴやブロックが好きなのは、触覚運動を満たしたい、そういう理由からです。
小学校1~2年生で手悪さが多いという評価も、同じ理由からです。
私は授業参観で手悪さの姿を見ると、触覚運動を満たしたい時期なんだな、と思って見ています。
先生が、本を両手で持つとか、プリントに書き込むとか、手を使う仕事をくれるといいなと思います。
筋肉がついて骨が太くなって、大人の身体に近づいてくると、体重が重くなって、多動が軽減します。
多動は、2歳から11歳の9年間で終わりが来る、と思ってください。
終わりが来ると思えば、なんとか しのいで行けますね。
社会ルールの側に立たないで、子どもの気持ちに共感する言葉をかける
親の仕事は、子どもがまだしていない先のことに、声をかける育児が多いですね。
手を洗いなさい。
ご飯を食べなさい。
お風呂に入りなさい。
早く寝なさい。
取り掛かりの遅い子ども、切り替えの遅い子どもに、先のことを言うのは大変な労力がいります。
一度の声かけで、子どもが実行してくれれば、育児ストレスは軽いのですが、何度声をかけても子どもが実行しないと、育児ストレスは重いです。
育児の困難さに、共感の声をかけたら、お母さんの目から涙があふれたのは、お母さんに重い育児ストレスがかかっていたからです。
一生懸命やっているが、子どもを叱ってばかりで、お母さんは自分が悪いと思うようになります。
それがますます、お互いに悪循環になりますね。
まだ起きてないことを言うと、子どもには命令に聞こえるので、先のことを言うのやめます。
子どもがすでにしたこと、今していることに、たくさん声をかけます。
レゴの遊びを切り上げられない子どもに、夕飯を誘う時の言葉かけの例です。
「レゴで何々を作ったんだね。」
「これはどうやって思いついたの。」
「カッコイイね。」
「7時に夕ご飯だからね。」
「7時に待ってるよ。」
「ここに時計を置いたからね。」
「7時の針を描いたよ。」
「作ったレゴを、皆に見せよう。」
否定語でなく肯定語で共感を伝えよう
お店での声掛けは、「走らない」「触らない」よりも、「何々を見たら戻ってきてね」「靴のかかとを床につけて歩いてね」「大事な品物だから見るだけね」という風に、して欲しい行動を言葉にします。
「何々しない」と否定語を言うのでなく、「何々してね」と肯定語で話すようにします。
これを家族である大人が、全員で習慣にするようにします。
朝の着替え、朝ごはん、夕ご飯、入浴から寝る前の支度で、1日のうちのどこからでもいい、「何々したね」と言う共感の言葉と、「何々しよう」とするべき行動を言ってあげる声掛けを試してみてください。
以上のように伝えると、若いお母さんは「そうすると、子どもを否定せず、子どもを肯定することになり、子どもの自己肯定感にもつながりますね」と言って、少し笑顔になりました。
つらくなったら、またいつでも来てください。
切り抜けていく方法を、相談しましょう。
大場みすずさんの「伝わる声かけ変換」も肯定的な声のかけ方の参考になります。
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