猫ちゃんブログでは、言葉を持たない猫の行動の意味を想像し、説明できない子どもたちの行動の意味を考えています。
子どもの行動理解、子どもの喜ぶ教材、特別支援教育、発達障害、不登校、育児、行動調整などについて、梅津八三の心理学の考え方を紹介しています。
梅津八三の心理学から、今回は、先生や保護者の皆さんが、発達障害のある子どもたちと係わる時の理解のポイントを3つ紹介します。
感覚の発達順序の理解
身体の感覚器官は、触覚➡視覚➡聴覚の順に発達します。
1.身体全体で触れる、手で触れる感覚が、子どもにとっては楽しいです。
プール、ブランコ、抱っこやおんぶ、ブロックやレゴ、パズルなどが好きですね。
動きたがる子どもさんは、触覚を満たすと落ち着きます。
配り係にしたり、手に教材や文房具を持たせましょう。
活動の1問目に、触れるカード、動かせるカードがあると、参加しやすくなります。
2.目で見てわかる情報が、子どもにとっては分かりやすいです。
「順番順番」と言葉で言うより、順番に並んだブランコ待ちの絵を見せると、ルールが伝わりやすいです。
順番という言葉が表す状況を、目で見てわかるようにしましょう。
先生や保護者が脳の中で思う状況を、脳の外に絵で見せてください。
絵が見せられない時は、地面に1⃣2⃣3⃣の数字を書いて、3番目だということを見せてください。
園庭や校庭の立体空間で、全体を把握することが苦手なので、平面の絵がいいですね。
園庭に出る前に順番の絵を見せる、体育で校庭に出る前にテレビモニターでドッジボールのルールを見せる、などの全体視と予告が必要です。
3.目に見える情報が出せない時は、音声に身ぶりをつけましょう。
先生の言葉を耳で聞いた子どもが、脳内にイメージを持ちやすいように、身振りで助けてください。
発達障害のある子どもたちは、聴覚指示の理解と記憶が苦手な子どもたちです。
音声は目に見えず、消えてしまいます。
子どもたちの心理の側に立って、触覚を満たす➡視覚情報を使う➡聴覚指示が最も受け取りにくい、と理解して係わりを工夫しましょう。
言葉の発達順序の理解
4.言葉の発達の順序は、実物で分かる➡身ぶりで伝える➡写真・絵・図➡文字➡音声
バナナなら、バナナの実物そのものが、子どもにとっては最も分かりやすいです。
次に、バナナをむくような身振り、バナナの写真、バナナの絵、バナナの図、バナナという文字、バナナという音声、このような順でバナナの実物から遠くなります。
分かりやすさの順で言うと、実物が最も分かりやすく、文字や音声になると、実物から離れて分かりにくくなります。
子どもたちの興味を最も引くのは触れる実物、次に目で見える画像、注意集中を保つことが難しいのが文字と音声です。
子どもたちがゲームに夢中になるのは、手で操作できる、目で見えるからですね。
子どもたちは、文字の読書から離れ、家族と目を見て話す会話から離れがちです。
家庭では大人もスマホやパソコンと離れ、子どもとレゴやアナログゲームをしながら会話を楽しみましょう。
学校では、注目しやすいデジタル教科書や、手で操作できるタブレット学習を取り入れて、参加度を高めましょう。
文字と音声だけの授業でない、身ぶりや画像、実物を使ってください。
運動は、音声記憶が苦手な子どもたちの、記憶を助けます。
bとdの向き、三角形と四角形、円の半径・直径、1次関数・2次関数のグラフなど、身振りをさせて記憶を分けましょう。
梅津八三の接近仮説でアプローチしよう
苦手なことの多い子どもたちと、係わる時の接近の方法は4つあります。
5.今の勢いの保障➡共感と同行➡得意なことの拡大➡苦手なことへの踏み出し、です。
係わる時に、この4つの段階を頭に入れておきます。
まずは、子どもの行動を否定しないことで、仲良くなれます。
園庭に飛び出す、教室から飛び出す子どもがいたら、誰かが同行します。
避けている苦手なことは何か、接近が起きやすい得意なことは何か、観察します。
苦手なことに共感を示し、得意なことに同行し、大人の知恵で得意なことをさらに広げてやります。
得意なことで満足が得られると、自分に自信が出て、苦手な場面に戻れたり参加したりしやすくなります。
梅津八三は、苦手な状況の不全感はかんしゃくやパニックを起こしやすく、得意な領域の満足感は新しい行動につながると言っています。
保護した子猫の世話行動で自分に自信が持てた例
昨夜、テレビ番組「坂上どうぶつ王国」で、2匹の子猫を育てることで、起立性調節障害による不登校が軽減した家族の再生の話を見ました。
起立性調節障害で朝起きられず、自分に価値がないと思えて苦しい時に、2匹の子猫の夜中の授乳を引き受けて、自分の存在に自信を持てたお姉さんの話でした。
起立性調節障害の寝たきりの保障、妹や両親の心配と見守り、妹が提案した2匹の子猫の引き取り、眠れない夜中に子猫に授乳して自分の居場所と役割が持てた、その自信から少しずつ登校へ踏み出した、また家族で食事ができるようになって嬉しいと、3年間の経過を振り返り、妹さんが話していました。
お姉さんの猫の授乳行動は、夜中に起きているお姉さんの得意な領域だったのです。
この経過も、梅津八三の接近仮説と合っています。
発達障害児を理解した係わり方のまとめ
学校の単年度担任の1年間では、子どもの変化は難しいかもしれません。
①発達障害児の感覚の満たし方、「触覚➡視覚➡聴覚」の順序を理解し、
➁言葉の難易度、「実物で分かる➡身ぶりをさせる➡写真・絵・図を見せる➡文字で残す➡音声は消える」順序を理解して、
➂「現勢の保障➡共感と同行➡確定域の拡大➡新しい踏み出し」という係わり方を、義務教育の9年あるいは高校までの12年間、保護者や先生方と続けていきたいです。
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