ストレスがなく、らくらく生活している時の状況を100=平均的な情報処理能力とします。
人数の少ない、情報の少ない家庭、安心できる家庭で生活している時の調整力=情報処理能力が100ですね。
学校や会社に行くことが苦痛でない人は、家庭での100の調整力のまま、学校や会社に行けます。
子どもの調整力100は環境ストレスで半分の50になると理解しよう
ところが、発達障害があったり、登校渋りのある子どもは、100の調整力で学校にいられません。
人数の多い、情報の多い学校へ行くだけで、状況の判断や相手の気持ちの読み取りというストレスがかかり、時間的にも空間的にも、情報処理能力は100から90に小さくなります。
教室に入り、先生の音声指示を理解して、記憶し、行動し、道具を管理し、早いペースに乗らねばならないストレスがかかり、情報処理能力は90から80に減ります。
特に、感覚過敏がある、片付けが苦手、書くことが苦手、音声記憶が苦手、などのストレスがあると、情報処理能力は80から70になります。
また、3人以上で話せない、声の大きい先生、叱る先生、からかう友だち、対等を要求する友だち、などの対人関係ストレスがあると、過剰な緊張・過剰な不安、承認欲求・自分を守る心理から、調整力は70から60に萎縮します。
睡眠が不足した、朝ごはんを食べてこなかった、偏食がある、なども加われば、調整力は60から50に減るでしょう。
ストレスのない家庭で、ゆったり生活している時の調整力100に比べて、情報処理能力50の力で過ごさなければならない学校は、気持ちが荒れる、行きたくなくなる場所になります。
さらに、普段とは違う、行事が入ったり、係の仕事が入ったりすると、想定外の情報処理能力が必要で、こだわり、パニック、不参加、破壊、暴言、暴力などの粗大行動が起きやすくなります。
子どもの調整力100から、ストレスとなる要因を引き算していくと、子どもの力と環境との関係を理解しやすいです。
目の前の子どもに100の力を要求しているが、発達障害の子どもは50の力で頑張っているのだ、と理解してみてください。
すると、わかりやすい言葉、認める言葉、暖かい言葉、応援する言葉をかけられるようになります。
環境ストレスを減らすために学校や家庭でできる合理的な配慮
子どもの環境ストレスを減らすには、通常学級でも特別支援学級でも家庭でも、以下のような方法が考えられます。
①少ない人数の環境、8人定員の特別支援学級、個別指導をしてくれる通級指導教室などは、情報処理が少なくて済みます。
利用するには、本人や保護者の希望、心理検査の結果、児相や医師の診断が必要です。
②お母さんや先生が音声で伝えても、音声は消えてしまい、忘れられやすいです。
短く言いましょう。
実物・身振り・絵・図・文字を足して、目で見てわかるように伝えると、子どもの側は記憶の負担が減って、情報処理をしやすくなります。
③「ここを見てください」「1分聞いてください」「2つ考えましょう」「3人答えてください」「1段落読みましょう」「3行書いてください」「①~⑥を計算しましょう」など、それぞれ単一の行動になるように指示しましょう。
④物理的な工夫、道具の工夫から始めましょう。
本人の希望を聞いて、先生の希望も伝え、座席の位置を個別に相談しましょう。
ランドセルは机から近いところ、あるいはロッカーを2つ使ったりしましょう。
全員の片付けタイムを設けましょう。20分休みの前、昼休みの前、帰りの会のはじめなど。先生は対象児童の片付けを手伝います。
忘れ物・なくし物が多い時は、家庭に2つずつ用意してもらいましょう。
連絡帳が書けない時は、先生が書くか、友だちの連絡帳コピーを貼ってやりましょう。
学校と家庭、可能な範囲で 電話・FAX・メールの連絡を取り合いましょう。
宿題は学童や家庭で手伝ってやり、片付けのコツは1対1で教えましょう。
宿題が仕上がらない時は「ここまで頑張りました」とメモ書きを添えて、家庭では早く寝かせてください。
書くことが苦手な子どもには、高学年まで漢字練習帳50字を使い、友だちの板書ノートのコピーやGoogle レンズでの板書撮影プリントなどを貼ってやりましょう。
板書をノートに書けない小中学生がGoogleレンズで板書をコピーする方法
⑤肯定的な言葉をかけましょう。できるだけ身振りを添えて。
何人か注目していなくても「全員が見てくれて、嬉しいね」と言って、先生自身の目を指さす。
「休み時間みたいになってる。テレビのリモコン消音ゼロで黙って書こう」と言って、手で0を作って見せる。
2~3人しゃべる子どもがいても「聞きとり名人!(間を開けて)かっこいい」と、片手を耳に当てて、良い行動の児童に注目する。
一人だけ書かない時「このクラスは28人。25人が書き始めました」書く身振りを見せる。
「あと1分で体育館だから、体育館に行ってから着替えるのでいいよ」着替えの運動着を手渡す。
「忘れたら言ってください。あるものは貸します」笑顔で言う。
⑥目に見えない気持ちを絵に描いて説明してやりましょう。
丸棒人間と吹き出しを描いて、単語を記入すれば十分です。
⑦本人の気持ちや友だちの気持ちの、通訳をしましょう。
「気持ちは分かった」「何々という意味だったのかな」「何々という気持ちだったみたいだね」「気持ちが落ち着いたら話を聞くね」「今は謝れなくても明日できるよ」など。
発達障害の子どもの力と環境との関係
学校の先生も家庭の保護者も、子どもの力を暦年齢や学年で考えやすいです。
子どもの力は、一人一人違います。
こだわり、パニック、不参加、破壊、暴言、暴力などの行動調整の乱暴さは、環境ストレスの影響で、子どもの調整力が小さくなっている場合が多いです。
発達障害や登校渋りの子どもから環境ストレスを引き算し、子どもの力を数字で理解し、先生や保護者の物理的な工夫、言葉かけの工夫など、特別な支援、合理的配慮、+10の環境を提供したいですね。
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