教育仮設No.17-1 小1プロブレムか、小1ギャップか
15年ほど前に、小1プロブレムということが、話題となった。
小学校1年生の授業中に、教室から出て行ってしまう子どもたち、教室内をうろうろする子どもたち、学級崩壊とも呼ばれた。
子どもたちの側に、発達障害があって、集団場面への適応が難しい、という風にも言われた。
不注意があり、不器用で、衝動性が強く、分からない・難しい場面で、多動になってしまう子どもたちだ。
小学校から中学校への文化の違いについては、当初から中1ギャップと呼ばれ、不登校の一因とされていた。
中学の先生はそれほど困っておらず、中学1年生になった子どもたちだけが、小学校との違いに困るので、中1プロブレムではなく、中1ギャップと呼ばれた。
それに比べて、就学児を迎える小学校では、先生が大変困ったので、小1プロブレムと呼んだ。
15年経って私は、小学校についても、小1プロブレムというよりは、小1ギャップだと考えるようになった。
保育園から小学校へも、小学校から中学校へも、どちらも、文化ギャップから起きる問題なのだと、考えるようになった。
教育仮設No.17-2 保育園での保小文化ギャップの埋め方
保育園の巡回相談で、保育士さん支援を20年ほどしている。
ここ10年ほど、以下のように依頼して、保育園で実行していただいている。
保育園では、お昼寝のなくなる11月から3月にかけて、朝から室内で過ごし、給食を食べて、午後になったら、元気よく園庭や室内で遊ぶと良いと思う。
11月から3月の午前中は、制作、ハサミ、かるた、折り紙、塗り絵、迷路、ワーク、読み聞かせ、ジェスチャークイズ、スリーヒントゲーム、 なぞなぞ、しりとり、雑巾がけ、ロッカーや鞄の持ち物整理、洋服のたたみ方のコツの言語化、などを心がけてほしい。
自分の自由に席を離れるのでなく、先生に理由を伝達したり、先生に許可を得てから、用事を足すために席を離れるようにしてほしい。
4月から学校へ行ったら、朝から落ち着いて座っていることが大事、20分休みと昼休みに元気よく遊ぶことが大事、と保育士さんから子どもたちに予告しておいてほしい。
詳細は別の投稿でも書いたのでご覧いただきたい。
教育仮設No.17-2 就学を迎える家庭での保小文化ギャップの埋め方
家庭では、少人数で暮らしていて、思ったことをいつでも話し、丁寧語も親子兄弟では使わないかもしれない。
家庭でそうであっても、保育園や親戚のお宅に行った時は、よそゆきの顔や態度ができる子どもは、家庭と保育園、家庭と学校を区別できるので、そのまま入学を迎えても心配が少ない。
しかし乳幼児の頃から人見知りがなく、家族と他人を区別せず、誰にでも話しかけ、親戚のお宅でもレストランでも、よそゆきの顔や態度がない子どもについては、まずは大人が小学校の集団場面を意識して、家庭でできることに一緒にチャレンジすると良いと思う。
1月から3月の間に、土日が15回、30日分ある。
卒園式から入学式までの春休みも、10日あまりある。
合計最高40日、チャレンジできる。
1.片付け
その40日の数日でもいいので、朝ごはんを食べ終わったら、「保育園が終わって小学生になるから、お手伝いしてくれるとうれしいな」と話して、食器洗いや食器片付けを一緒にしてもらうといいと思う。
2.座る
「保育園は朝から遊ぶけど、学校へ行くと朝から座って勉強するから、お昼まではキッチンのテーブルといすで、一緒に本を読んだり、折り紙したり、絵をかいたり、工作したり、かるたをしたり、迷路のプリントしたりしようか。」と誘って、家族の誰かが一緒に付き合ってほしい。
下手でも上手くいかなくても認める言葉をかけてほしい。結果の出来た出来ないではなく、「努力したね、チャレンジしたね、去年より上手くなったね、15分頑張れたね、3枚書けたね」 などと、途中経過を認める言葉かけにしてやると良い。
のりの付け方や、ハサミの切り方など、大人だからわかる様々なコツを、言葉にして教えてやって欲しい。保育園も小学校もなかなか個別指導のチャンスがないからだ。保護者に個別指導をやってもらえたらとてもありがたい。
筆圧が弱い子どもさんは、くもんのこども鉛筆が、書きやすい。
短くて太い、6 B➡4 B ➡2Bの三角鉛筆だ。
算数を意識して左から右へ、国語を意識して上から下へ書くようにする。
間違い探しの左右の絵のスキャニングなども、左から右へ、上から下へ、45㎝と長い透明定規などを使って、探す位置の順序を決めて探すようにする。
落ち着けず、行動が忙しい子どもさんは、この順序性が言語化されていない。
不器用な子どもさんほど、目についたものから処理する方式の子どもさんが多い。
上の画像左から、ひらがなを練習させたい時は、あいうえお順になぞり書きしても良いが、見本を見て書くのであれば、線分の少ないものから多いものへ増やしていく。
「〇➡の➡め➡ぬ➡あ」の順に練習する。
書き順は大目に見る。
まず同じ形を構成できることが大事だ。
ホワイトボード用の、太いホワイトボードマーカーなら書きやすい。
画像の右上のボールのような握り持ちができるマジックは、ダイソー製。
ピンポン玉に7~8cm の鉛筆を差し込んでも、握り持ちができる鉛筆が出来上がる。
三角鉛筆は様々な種類が文房具売り場で販売されている。
筆箱に入れてやる5本の鉛筆には、氏名の他に1から5まで番号をふっておくと、子どもは集めやすい。
12 cm のくもんの鉛筆なら、持ちやすい。
ダイソーやセリやにもある。
不器用を、物理的に助ける環境が、大事だ。
エジソン箸同様に、「もちかたくん」という鉛筆用の、指サックもある。
100円ショップに「プニュグリップ」という、鉛筆を太くして持ちやすくするサックも売っている。
3.無言
ある時、「黙ってやれるかな ?だんまりタイムね」と、上記の2番の「制作中」に黙って取り組ませてみてほしい。
保育園や家庭では思ったことをすぐ口にしていいのだが、小学校の授業となると、ひとりの子の音声が、先生の説明や30人の仲間の考え事の邪魔になる時がある。
「大勢で勉強するから、黙って頭の中で考える、テレビリモコンの消音で心の中でつぶやくと、他のお友達の邪魔にならなくていいんだよね」 と予告しておいてくださるだけでもいい。
小学校の教室文化が、保育園文化や家庭生活とは違うという予告だけでも、入学後とても 助かる。
例え、子どもがそうできなくてもいい。
大人が黙って取り組んで見せたり、大人がとても小さい声でささやいて見せたり、そういう文化があることを知らせておいてくれるだけでも、学校文化の予告になる。
4.準備
「小学校へ行くと給食当番もあるからね。」と話して、お昼ご飯や夕ご飯も、準備を手伝ってもらったり、片付けを手伝ってもらったりするといい。
5. 掃除
休日の午後は、、お掃除も手伝ってもらえるといい。
学校で、お掃除当番があるからだ。
雑巾絞りができたら、すごい。
これも、コツがあるので、大人に教えて欲しい。
本人がしぼりやすいやり方で、そこからさらにちょっと良くなるような教え方が良い。
全く違うやり方だと受け入れられない。
本人のやり方に、+1の先生が教えてくれるやり方。
学校は、未だにほうきを使う。
家庭では、ほうきは玄関掃きぐらいしか、チャンスがない。
家庭は、掃除機だからだ。
だから子ども達は、ほうきの前後の向きを知らない。
ほうきは不等辺三角形になっていて、穂先が短い方が足元に来て、穂先が長い方が足の前方に出る。
今時の子どもたちは、ほうきの向きを知らないので、どっち向きでも構わず掃いて、学校のほうきは丸く減っている。
もちろん、掃除機かけや、ゴミ集めを手伝ってくれるのでも、とても素晴らしい。
させ方は、やってみせる、バトンタッチ、見守る、任せる、褒める、である。
誰でもそうだが、けなしたら、二度とやらない。
「ありがとう、助かる、嬉しい」を、伝えよう。
6.片付け
どこか一箇所、狭い場所を一緒に片付けるといい。
キッチンのスプーンやお箸の引き出しとか、 はさみや文房具の引き出しとか、靴下の引き出しとか、おもちゃ箱とか、毎回一箇所だけ、片付けのチャレンジをできたらいい。
片付け行動が起きにくい時は、初め大人がそばで片付けてやり、途中から品物を手渡し、片付けるところを見守り、「やったね」と認めるようにする。
7. 挨拶・丁寧語・「そうだね」
後は、大きな声で「おはよう、こんにちは、ありがとう」などの挨拶ができる。
「小学校では、授業中は、何々です、何々しました、と丁寧な話し方で話すよ」と予告してもらう。
親子や家族で話し合う時に「そうだねって、言ってから、自分の考えを『僕はこう思う』と言えるとかっこいいね」と予告してもらえるといい。
就学を迎える本人以外の家族が、普段から心がけて「そうだね、そうですね」と言い合えることが、本人の模倣に繋がる。
「そうだね」が言えると、友だちとの会話が弾む。
以上、7項目を本人に予告しておくのと、全く知らせないのとでは、保育園と小学校の文化ギャップの受け止め方が、随分と違う。
上記を一つでも、家庭で心がけてもらえたら、保育園から小学校への文化ギャップを、多少なりとも解消できると考えている。
【楽しく覚える!学校生活の行動規範】学校ソーシャルスキルフラッシュカード ②学校生活編
次回は、中1ギャップの乗り越え方を投稿したい。
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