発達障害児の注目をうながす方法

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教育仮設4-1 指差す

見る・聞く・考える・書くなどの作業を、いくつか同時に行なうことが苦手な子どもには、「見てください」「聞いてください」「考えてください」「書いてください」と、単一の行動を指示することが原則である。

TOSSの先生方が実践されている、一事一指示の原則である。

また、聞くことと書くことを、同時に行なうことが苦手な子どもには、呼名の音声系の注意を控えて、接近して無言の指差しをする。

例えば、机間巡視で、板書の書写に取り掛からず、遅れている子どもがいたら、何々しましょうの意味で、ノートを指差すか、板書を指差すか、鉛筆を指差して、取り掛かりを促す。

音声系を注意に使わない。

身振りで促す。

どうしても音声系を使う時は「何々しましょう」「書こう」と言う Let’sで再度促す。

先生方がよく使う、集団に帰属させる言い方「あと3人の人が取り掛かると全員です」のような促しもいい。

音声系は、出来る限り「書けたね」「丁寧だね」「早いね」などの行動を認める言葉に使う。

教育仮設4-2 指差し棒を使う 

先生の指差しのインパクトが少なくなったら、ダイソーなどにある指差し棒を黒板で使う。

大型であればあるほど、インパクトがある。

学校のさすまた(侵入者を押さえつける道具)の大きさで作った先生もいたそうだ。

刺激効果が少なくなったら、指差し大型ペープサートや、クエスチョンマーク棒に変える。

新奇刺激の方が効果が高い。

先生の黄色い軍手指・指差し棒・大型ペープサート・大型クエスチョンマークなど、数種類用意しておくと飽きないで良さそうだ。

教育仮設4-3 目に見える枠を使う

多学年の6人の子どもを一人の先生が見ている、特別支援学級の授業を拝見した。

先生は、それぞれの子どもの学習進度にあったプリントを用意していた。

しかもプリントは、 A 4でなく A 3に拡大されていた。

先生は教室内を飛ぶようにして、一人ひとりの進度に合わせて、学習を教えていた。

5時間目だが、1年生から6年生までの全員が、熱心にプリントに向かう素晴らしいクラスだった。

その先生が、1年生の子どもに、国語の教科書の「花の道」の内容理解の読み取りをさせていた。

「見て、見て」と、先生が文章を指差して、音声で5 W 1 H を問う。

自閉スペクトラムのあるその子どもさんは、参観している私が気になってしまい、先生の指差しの場所を見ない。

そこで、視線をもらいやすくするために、私がその場で 、下の画像のような大型の付箋紙を切り抜いて、枠を作った。

これは教科書の 注視の枠 の例

「ここを見てください」の意味の、注視の枠である。

初めは先生が枠を手に持って、解答の場所を枠で囲み、答えを読んでもらう。

慣れたら枠を子どもに持たせて、解答を「枠という目」で探させる。 

枠があると、注視がそこに来る

教育仮設4-4 定規を使う

国語の音読の時、行を見間違える・読み間違えるようであれば、筆箱に入っている定規を使って左へ滑らせていく。

低学年担当の先生方は、指たどりをさせて音読させている。

そうでも良い。

定規を滑らす運動が楽しい子どもには、定規が向いている。

低学年の子どもは、運動感覚を満たすことが好きだ。

教育仮設4-5 スラッシュ線を入れる

低学年で音読のたどたどしい子どもは、ひらがな3文字以上になると、一気に判別して読むことが難しい。

低学年の教科書は、文節で1文字分空白になっているが、ひらがなが何文字も続いて読みにくそうにしている時には、単語区切り・文節区切りで、鉛筆のスラッシュ線を入れてやる。

スラッシュ線まで、一気に数文字見てください、という印だ。

スラッシュ線を嫌う子どもには、指をコの字にすることを教える。

3~4文字の文節を、指のコの字で囲んで、その範囲を目で見てくださいという印である。

これは算数の大きな数だが、4桁ずつスラッシュ線を入れると、読みやすい。

教育仮設4-6 先生が前振りを言う

自分の名前を呼名されると先生の方を向けるが、呼名のない全員に向けての指示を聞き逃しやすい子どもには、「あなたに言っているんですよ」のかわりに、前振りを使う。

例えば、

「全員に言います」

「みんなで読もう」

「1年1組の全員が書きます」

「2つ言います」

「今から書いてもらいます、全員」

「教科書を開いてもらいます、スタート」

などの前振りで、あなたに言っていますということを強調する。

教育仮設4-7 子どもに復唱させる

「何々をする」という指示の記憶の記銘・保持・想起には、指示の再言語化が欠かせない。

音声系の聴覚記憶は短い。

つぶやいていないと忘れてしまう。

私は、加齢によって、ここへ何を取りに来たのか、忘れることが、しょっちゅうである。

なんとなく取りに行ってしまった時に、それが起きやすいことが最近自分でもわかった。

はっきりと言葉に出して、「何々を取ってくる」と言いながら行動したときは忘れない。

ワーキングメモリーの弱い子ども、短期記憶の弱い子どもも、おそらく同様である。

先生の指示に対する行動の実行には、復唱やつぶやき、内言語が欠かせない。

「何々をしましょう、はい、皆さんもどうぞ、言って」と復唱させて、行動させて欲しい。

教育仮設4-8 先生が身振りをする

先生が身振りも付ければ、視覚記憶という助けになる。

「教科書を開きましょう」と言いながら、両手で本を開ける身振りを見せる。

「ノートに書きましょう」と言いながら、書く身振りを見せる。

「考えましょう」と言いながら、頭を指差す身振りを見せる。

教育仮設4-9 子どもに身振りをさせる

さらに、子ども達にも身振りをさせれば、運動記億という助けになる。

漢字の空書きなどが、そのよい例である。

漢字を覚える方法 | 猫ちゃんブログ

にも書いたが、漢字の空書きでは、画数の数字を言うより、へんやつくりの名称を言わせながら、空書きさせて欲しい。

空書きとともに、漢字の分解と合成をイメージさせて欲しい。

教育仮設4-10 空間の位置を同じにして見やすくする 

中学校の数学の数式のように= を左に合わせて縦に書いていくと、間違いは少なくなる。

位置が同じであることが間違いを減らす。

小学校の恒等式のように右横に書いていくと、間違いが起きやすい。

上の式と下の=途中式の数字が、上下で同じ空間位置に書かれるとミスが少ない

小学校の算数も = を左に合わせて下方へ書くと、空間に弱い発達障害の人たちに利益がある。

下の画像のここがたいせつの例題は、整理された桁の枠の真下に9460000000000の数字があって、わかりやすい。

下の問題➊の①は不親切にも、桁の空間の青い枠が右へずれている。

教育仮設4-11 何のプリントか分かるように外折りにする

なくしもの、探しもので、日常が忙しい子ども達がいる。

先生が配布してくれたプリントは、何のプリントか分かるように、外折りにすると良い。

中折りだと、何のプリントか、いちいち開けてみないとわからない。

教育仮設4-12 テレビモニターを使う

小学校の先生で、 iPhone と iPad とテレビモニターを、授業に生かしている先生がいる。

教室離脱をしていた子どもさんが、その先生の授業では、テレビモニターの一番前に座るようになった。

国語の漢字の書き順も、書写のお習字の書き方のコツも、 YouTube からダウンロードした教材を見せてくれる。

テレビモニターという50インチの画面は、子どもにとって黒板より空間が狭く、見やすく、理解しやすい。 

 YouTube を利用した教材準備は、毎日大変だと思うが、子どもにとって興味深く、誰もが集中しやすい。

合理的配慮、 ICT 活用、特別支援教育を理解した、素晴らしい先生である。

以前、TOSSをやっていた先生で、パソコンとプロジェクターを使って、子どものノートそのものを映して、以下の画像のように筆算を教えている先生がいた。

書くことが苦手な子どもも、先生の途中計算式を一生懸命真似て、下の画像のように書いていた。

30人学級で、支援員さんもいないので、PCプロジェクターがT₁となり、先生自身がT₂となって、机間巡視して個別に理解を支援していた。

教育仮設4-13 タイムタイマーを使う

小学校の先生がたは、3分間でやりましょう、5分間でやりましょう、というような時に、ダイソーでも手に入る、キッチンタイマーを活用してくださっている。

キッチンタイマーでも良いが、発達障害の子どもさんには、時間の経過も目に見える、下の画像のようなタイムタイマーを使うとよい場合がある。

以上のように様々な方法で子どもの注目をもらい、先生の目標とする行動に取り掛かってもらうようにしたい。

これらの配慮は、学校現場だけでなく、保育園や家庭でも役立つはずだ。

特別支援の合理的配慮の多くは、物理的環境を整えるだけで、随分と子どもの行動を助ける。

物理的環境を整えるアイディアを持つ先生、という人的環境も大事だ。

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