子どもの、偏食について、かんしゃくについて、相談を受けることがあります。
どちらも、「偏食」「かんしゃく」と呼んで、それを直そうとしやすいですね。
直そうとする先生や保護者の位置をモニターすると、社会常識の側に立っていることが分かります。
すると、どうしても、偏食を消去する、かんしゃくを消去する、という消去対応になります。
それは、なかなかうまく、子どもに受け入れてもらえません。
困った行動の原因や過去の事実を読み取る
うまくいく対策を考えるには、消去法から考えるのではなく、今現在の行動や症状に至った、原因や過去の事実を読むことで、対策を考えやすくなります。
それは、子どもの側に立つ、ということでもあります。
子どもの側の、原因や過去の事実に立って考えると、子どもに受け入れてもらえる対応を考えることができます。
下の図に、困った行動を、中央にまとめてみました。
「困った行動➡消去」と考えるのではなく、「困った行動➡原因や過去の事実➡これからの対応」と、原因を読み解いて、対策を工夫するようにしてみてください。
今回は、1番の「偏食」と2番の「こだわり」について、読み取り方と対応を、以下に詳しく紹介します。
偏食
偏食という行動が現われるには、その原因に、感覚過敏や味覚過敏があります。
年齢が小さいほど、言葉の発達が遅いほど、食べ物の偏りを保障してあげた方が、子どもの心は快適です。
「栄養」や「健康」という言葉の意味がまだ分からない子ども子どもに対して、「栄養や健康のため」と言って、嫌いな物を押し付けるのは、虐待です。
子どもの言語発達水準を、よく見てください。
5歳~6歳の言語発達水準を持っているかどうか、自閉症スペクトラムの感覚過敏が強いかどうか、それらを考え合わせて、好きな食べ物の中で、栄養を摂る工夫をしてみてください。
お菓子が好きな、チョコレートが好きな子どもさんなら、朝はチョココーンフレークでいいです。
コーンフレークは、ご飯やパンと同じで、糖質・食物繊維があります。
バナナに、チョコレートシロップをかけてもいいです。
バナナは、カリウムと食物繊維が豊富です。
バナナに、ヨーグルトをかけた朝ごはんなら、カルシウムとタンパク質も摂れて、最高ですね。
そんな風に、好きなものの中で、朝、喜んで食べるものを、朝ごはんと考えてみてください。
年齢が小さいほど、言葉が未発達なほど、自閉スペクトラムが強いほど、偏食は保障した方が、朝のスタートが快適になります。
私は卵かけご飯しか食べない、麺しか食べない、牛乳も飲めない小学生でした。
牛乳が、臭くて飲めなかったのです。
給食の脱脂粉乳は、友達に分けて飲んでもらったり、鼻をつまんで我慢して飲んだりしていました。
5年生頃、コーヒーシロップを入れると牛乳の臭みがなくなり、私が牛乳を飲むことを発見した親が、毎日それを飲ませてくれるようになりました。
偏食も、家庭では一度も、無理に変更させられたことがなかったです。
それは、良い思い出です。
そしてそれは、子どもたちに栄養を強要しない、私の係わり方に、通じています。
こだわり
こだわりという行動は、同じ状態を保持することで不安がなくなり、気持ちが安定するので起きる行動です。
朝食はポテトフライと決まっていたり、同じ T シャツを毎日着たがったりします。
じゃがいもはビタミン C も入っている完全栄養食の野菜ですから、毎朝ポテトフライでいい、自分も毎朝決まったものを作るのは簡単だ、と考えると気が楽になります。
「この T シャツを気に入ったな」と思ったら、同じものを2枚、サイズ違いを2枚買ってください。
年齢が小さいほど、言語発達が遅いほど、自閉症スペクトラムが強いほど、こだわりの消去は難しいです。
不安にならないように、同じ事にこだわっているのです。
こだわりは、面倒や変化に対する、身の守り行動ですね。
「これいいね。これ安心だよね」と共感して、味方になってあげてください。
一人でこだわっていたことが、2人で共感できるようになると、相手の考えを聞くということが起きるようになります。
ある時、ぬいぐるみを「ここに置いて」と頼むと、手放してカバンに入れて置けたり、「残念だけど、1つ足りなくなると思うよ」と予告しておくと、共感者の口調を真似して「まっ、いいか」「ざんねーん」と、自分に言い聞かせることができるようになったりします。
「何々だと思うよ」という予告と、「何々できると思うよ」「何々してほしいなぁ」という依頼やつぶやきと、「まっ、いいか」「残念だね」という刷り込みが、大事になります。
同一性を保持しようとする子どもに対して、こだわりを肯定し、こだわりに共感し、こだわる物や状況を、2人以上で共有することが大事です。
周囲が味方になることで、「同じだ、一緒だ、味方だ、うれしい」という共有感覚が子どもに育ちます。
すると、同一性の保持が緩んで代替えのもので済んだり、待てたり、こだわりが緩んだり、相手の頼みを聞いて譲ったり、我慢してくれたりするようになります。
偏食やこだわりには、原因があります。
社会常識の側から、偏食とこだわりを消去しようとするのでなく、偏食とこだわりの原因を読み取って、原因を保障する対策を立てて、子どもの味方になってみてください。
肯定され共感されると、一人で自分を守っていた子どもの気持ちが和らいで、偏食やこだわりも共感者に対してはゆるむ日が来ます。
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