34 庭のない暮らし
お母さんは、引っ越しで庭を駆け回る環境を失った。
日長一日、お母さんは室内の日向で、静かに昼寝をする。
猫は、14~18時間、昼寝するそうだ。
猫はもともと、夜行性の動物だ。
昼間、体力を昼寝で温存し、夕方から狩猟に向かう種なのだ。
完全室内飼い
狩場のないお母さんは、完全室内飼いの猫となり、ますます気持ち平らで穏やかな、大人しい猫になった。
以前の家と同様に、実家にも猫向けの出窓がない。
お母さんは外を見たくて、朝は東の透明ガラス戸付近を、昼間は南の透明ガラス戸付近をうろうろした。
2階はこれまで経験がないから怖いのか、道路の騒音が嫌なのか、網戸を開けてやっても室内へ引っ込んでしまう。
網戸からは外が見えづらいと思うのだが、お母さんは網戸越しで外を見ることを好む。
猫の視力は、人間の10分の1だという。
視力0.1から0.2ぐらいだろうか。
かつてお母さんは、よそ様の2階の屋根に登って下りられなくなって、外泊した。
迎えに行った私の声はわかるが、私の姿を飼い主と判別できず、屋根で捕まえようとする私がわからないで、逃げ惑った。
緑色の猫草
猫は近眼であるとか、白黒しか見えていないといわれている。
正確には猫は、カラーを感知する目の網膜の錘状体細胞で緑色と青色はわかるが、赤色はわからないのだそうだ。
階段の踊り場に置いた、猫草の緑色が見えるくらいのようだ。
もともとは野良で外が好きだったお母さんには、この猫草が欠かせない。
ホームセンターで、毎週新鮮な草の鉢植えが手に入るので、ものぐさな飼い主は助かっている。
お母さんは玄関が開いても、外を見るそぶりはするが、敷居を越えないでくるりと室内へ戻る。
2階のベランダのサッシを開けてくれと、目と行動で私に要求し、サッシを開けてもらうとベランダへ出て日光浴をする。
日光浴はするが、フェンスから首を出したりはしない。
猫のお散歩
私はペット用のリードを買って、お母さんに付け、外出させてみた。
お母さんは腰を低くしたまま、地べたに這いつくばり、リードを引っ張って玄関へ戻っていこうとした。
3回ほど試みたが、お母さんはリードを付けてまで、散歩したいとは思わないようだ。
「私は犬じゃない。猫の尊厳である自由を奪うな!」といわんばかりである。
失礼致しました。
それ以来、リードはほこりにまみれている。
いつかお母さんがもっと年取ったら、お母さんが私に同行して歩いてくれる、「お散歩猫」にならないかと、ひそかな期待を抱いた。
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