学校教育を終えて大人になると、パソコンやタブレットおよびスマートフォンに、音声入力やキー入力で、文章を作成したり、書類を作成したりすることが可能になります。
学校時代のように、手書きで文字を書かなくても、済む場合が増えますね。
テレビモニターで学習への参加度が高くなる
学校教育のなかの特別支援教育では、合理的配慮として、書字障害のお子さんに、タブレットや Chromebook を、一番後ろの席で常時使わせる学校もあります。
医師の診断や学校の支援体制、本人の自己認知と希望、周囲の仲間への解説などが必要になります。
電子機器の整備は、毎年進化しています。
特別支援教育の巡回相談で、私が訪問している自治体でも、2021年には小中学校の児童生徒全員に Chromebook が与えられました。
鉛筆で書くことに苦手さを持っている子どもも、 Chromebook の作業には喜んで取り掛かります。
2022年には、小中学校の全ての普通教室に、大型テレビモニターが配置されました。
先生がテレビモニターに教科書を映し出してくれるので、クラス全員の子どもの注視が、テレビモニターに集まります。
一人一人うつむいてバラバラに見ていた教科書の箇所を、テレビモニターでは全員で同じ箇所を見ることが可能になります。
テレビモニターは、先生の音声説明を、視覚情報に変換してくれる、わかりやすい教材です。
先生の音声説明でイメージが持てない子どもや、耳からの情報に弱い子どもの授業参加度が高くなり、参加すれば理解度も高くなります。
話すことは得意だけれども、読み書きが苦手だという子どもさんにとって、視覚情報であるテレビモニターの役割は重要です。
テレビモニターがない時は、先生が教科書を胸の前に開いて、児童に見せて、どの箇所を見るべきか、指差してください。
なぜ書くことが苦手なのか
発達性協調運動障害という苦労のある子どもさんたちがいます。
乳児期には、寝返りやハイハイおよび歩行が遅れたり、左右差があったりします。
幼児期には、階段昇降・三輪車こぎ・ジャンプ・ボール投げ・なわ飛び・ハサミ・工作・着替えなどが苦手、スプーンや箸がうまく使えない、塗り絵がきれいに塗れない、滑舌が悪いなどが目立ちます。
児童期には、体育が苦手、音楽が苦手、書くことが苦手、自転車に乗れないなどが目立ってきます。
不器用だと、自尊感情や自己肯定感が低くなりやすく、学習意欲も低下しやすいです。
いじめ、不登校、肥満、ゲーム依存などの問題も、付随して起きやすくなります。
その子どもさんは何が好きか、何が得意か、書字の苦手さを忘れて、代替えで学びを保障できる教材を、ぜひ工夫してください。
苦労している書く作業はいつ終わりが来るのか
手で文字を書くことに、苦労している子どもさんがいたら、例えば、以下のように言ってあげてください。
①「大人になると、手書きの代わりに、パソコンやタブレットで文章を吹き込めるから楽になるよ。」
➁「18歳までは、あなたの脳の発達のために、書く作業にもチャレンジしてもらいたい。」
③「書くことも、小学校高学年➡中学生➡高校生と、だんだんうまくなるからね。」
④「なぞり書き、線つなぎ、丸付け選択、番号選択、解答カード付箋紙貼り付け、拡大コピー、解答欄のマス目、筆算の枠、作文カードなどで、大人も手伝うからね。」
子どもさんが落ち込んだり、投げやりになったりした時には、18歳で苦労に終わりがあること、代替え手段があること、あなたが楽になるように大人も一生懸命手伝うことを、その都度伝えることが大事です。
現勢の保障➡取り掛かりやすい確定域のプリント➡自全態➡苦手な文字を書く
とにかく、書く分量を減らし、苦労を軽減してあげることが、スタートの取り掛かりを良くします。
例えば、大きな1枚プリントをコピーして、設問ごとに切って、あげてください。
問題がたくさんあると、書くことが苦手な子どもさんは、プリントを見た瞬間に、書く負担がつらくて、プリントをクシャクシャッと丸めたり、暴言を吐いたり、教室離脱したりします。
①スタートは、書くのが苦手だという現勢を保障して分量を減らす(苦労があるんだね)。
➁その子の取り掛かりやすい確定域のプリントを用意して、自全態へ(やったね、記入したね)。
③自全態という満足から、苦手へも踏み出す(文字を書く)という順番を、いつも頭に入れておきます。
なぞり書きのプリントなら取りかかる
「ぷりんときっず」は、個人が家庭で使用するのであれば、無料でダウンロードできます。
なぞり書きです。
見本の横に書くのに比べると、書く作業は断然楽になります。
書き順を問わないようにしましょう。
まずは、文字の形があっていることが大事です。
ずれているとか、書き直しなさいとか、書き順が違うとか、ケチをつけないようにしましょう。
何文字でもいい、何行でもいい、「書けたね」「なぞれたね」と、できたことを認めます。
もちろん、最後まで書けたら、「最後まで書き通す力があるね」と、認めてください。
漢字練習帳に、宿題の漢字を書くのが難しい子どもさんがいたら、3回ずつ書けばいいことにし、青鉛筆でなぞり書き漢字になるようにしてあげてください。
線つなぎ解答
数字は10個しかないので、書字が苦手な子どもも割合書きやすいのですが、それでも鉛筆で書いたり消しゴムで消したりすることを面倒がるようであれば、線つなぎ解答ならば、直線書きの繰り返しで楽になります。
「算願」も、個人が家庭で使用するのであれば、無料でダウンロードできます。
比較照合丸付け選択
正解を丸で囲む選択プリントは、子どもが喜んでやってくれるプリントです。
話し言葉の長音「ー」と、書き言葉の「い・う・え・お」の使い分けはとても高級なルールです。
ひらがなは「じゅうす」と書いて「じゅーす」、「おとうと」と書いて「おとーと」と読むので難しいです。
どっちでもいいじゃないか、意味が分かれば、と、私などは思ってしまいます。
促音の「っ」「ッ」は欠落させられない文字ですが、長音「ー」は、「けえき」でも「けーき」でも良いのではないか、と思うのです。
学校教育の教育課程では正しく教授しなくてはいけなくても、書字に苦労している子どもがいたら、ノートの脇に「よくわかったね。発音は同じだね。」と、書いてやりたくなります。
漢字検定の受験級の目安チェック問題は、3つの選択肢から1つ選べば良いので、取り掛かりが楽です。
解答シールを貼るのは楽しい
解答の語群があると、取り掛かりは良くなります。
解答の付箋紙を選んで貼る
解答の選択漢字があれば、自力では書けなくても、漢字を知っている子どもたちがいます。
私はしばしば漢字や英単語を思い出せず、パソコンの選択肢から選ぶことを頼りにし、Google 検索で調べたりします。
道徳や国語で、感想を書けない子どもも、感想の付箋紙があれば、考えて選ぼうとします。
プリントに印刷された、動かせない文字語群選択肢は、脳内操作による、目の照合が必要です。
カードや付箋紙は、脳外で、手を動かしながら考えることができるので、探索・比較・照合が、楽になります。
発達障害とくくられる子どもたちは、脳内操作を苦手としています。
特別支援教育とは、脳内操作を、脳外操作に、工夫することです。
文字を書くことは嫌がっても、下の画像のように、カード解答ならば、喜んで取り掛かります。
県名漢字でなく番号を書けばいい問題
県名と、県名の位置を知っていても、47都道府県の漢字を書くことがつらい子どもがたくさんいます。
県名を書くのでなく、番号を書く方式にしたら、とても楽ですね。
幼児・小学生・中学生の無料学習プリントサイト|学習プリント.com
解答の選択肢ヒントがある
大きなプリントは設問ごとに切り分けて、1問ずつにするとやる気にさせます。
書くことが嫌いでも、選択肢のヒントがあると、ひらがな2文字ぐらいは、書いてくれる子どももいます。
「本をどうする?」「戸をどうする?」と、本を開く身振りと、戸を開ける身振りをつけてやると、身振りもヒントになり、意味記憶を助けます。
「おを」「えへ」「わは」の使い方に混乱のある子どもには、使い方の同時提示で、単語の中に含まれる文字「お・え・わ」と、単語と単語の間にくっつく文字「を・へ・は」を比べます。
白紙の中に、脳内で漢字を思い出す作業は嫌でも、動かせるタイルの選択肢で漢字を与えられると、考えることが楽で取り掛かりやすくなります。
ヒントの漢字があって、並べ替えるだけなら、取り掛かりやすいですね。
プリントへ書くことへの拒否が強い場合には、A3に拡大コピーして、4字熟語をハサミでバラバラに切り、4文字を並び替える作業にすると良いです。
A 4プリントは、書き込みも小さな文字になるので、書字が面倒な子どもにとってはつらいです。
プリントは、A 3に拡大コピーして、書いてもらうようにしましょう。
プリントを折って一目で見る問題の分量を減らす
国語も算数も、テストプリントの設問ごとに折ってやると、分量が少なく見えて、やる気を削ぎません。
間違いに対しては、「違う」と言わず、「よく考えたね」「三角屋根が似ているね」「他の三角屋根の漢字も知っているかな?」「会う、合う、今の中のどれだと思う?」などと言います。
50問1枚でなく6問を拡大コピーして楽々書ける筆算の枠
穴埋め問題なら書きやすい
基本的には、アルファベットタイルで、アルファベット26文字表を作れることが、前提になります。
ここでも、似ているアルファベットの区別が重要です。
ヒントの選択語群があると、さらに書きやすくなります。
b d f h m n p q u v y
i e b p q d f r n u h m y v z
好きなこと 虫に関してなら 絵や作文を書く
同じ用紙に文章を書くのでも、人の2倍も3倍も時間がかかる子どもさんがいます。
書く欄をマス目式にしてやると、少し楽になるようです。
カード作文 付箋紙作文
作文は、カード作文、付箋紙作文も、取り掛かりや文章構成を楽にします。
取りかかりの始めか最後にハガキサイズや名刺サイズの塗り絵をもらえる
45分の授業の取り掛かりの始めに、塗り絵や点つなぎプリントをもらえれば、助走になります。
文字を書く努力が続かなくなった途中でもらえれば、ひと休みの緩衝行動になります。
学習の最後にもらえると予告されれば、途中の意欲を支える、目当て、ゴール、ご褒美になります。
通常学級の中で
個別指導では、書く分量を減らし、選んで答えることで知識の確認ができる、そういう教材の工夫をお願いします。
①集団場面の一斉指導では、表はみんなと同じプリント面で、裏に解答番号選択のプリント面があるものを、机間巡視でそっと交換してやります。
例えば、表面は都道府県名を漢字で書くプリント、裏面は県の番号を選べば良いプリントです。
それには、座席は一番後ろが良さそうです。
本人にはあらかじめ「裏をやってね。」と伝えておきます。
周りの仲間から、何か異を唱えられたら、「あなたもこのプリントを欲しいのね。」と、あげると良いと思います。
➁あるいは全員、表と裏のプリントがあるものを配布して、「好きな方からやりなさい、残りは宿題です。」というのも良いでしょう。
本人と保護者の承諾があれば、書き文字に苦労している仲間たちがいることを話しても良いですね。
読書感想文を助けてくれるアプリ
漢字記憶を助ける方法
漢字記憶の助け方については、下記の投稿を参照してください。
発達性読み書き障害の子どもを持つ保護者の体験談からの本
保護者の視点から、家庭でできるサポート、学校の支援、将来の職業などについて触れてある本です。
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