お金の学習と表記 3

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ルーティーンの自主変更 臨機応変の行動 

 28歳の自閉症の一平くんと、病院小児科で、3週間ぶりに学習した。

一平くんはこの日、臨機応変の行動を、自発的に取れた。

16時が予約の約束の時間で、一平くんは診察室に入って来るなり、500円玉を私に差し出し、不明瞭な音声だが「ジュース」と言った。

私はすぐに、自動販売機用に、500円玉を100円玉に交換したいのだな、と思った。

ジュースの自動販売機は、500円玉でも OK だが、たまに硬貨を受け付けない時がある。

私も100円玉で経験済みで、何度硬貨を入れてもその100円硬貨が返ってきてしまう自動販売機があった。

私はその時、千円札に対応を変えた。

おそらく一平くんも、自動販売機で500円玉が返ってきてしまうので、100円玉に交換したいと思って、私の診察室まで来たらしかった。

一平くんに、直接教えていない、臨機応変の行動が起きた。

成長を感じる。

新しい行動 メモ帳を買う

この日は、成長を感じさせることが、さらにあった。

普段のルーティーンに、こだわらなかったことだ。

10月下旬だが、暖かい日だった。

いつも、病院近くのスーパーの駐車場でお母さんの車を降りて、病院まで、一人でマラソンしてくる一平くんは、汗をいっぱいかいていた。

普段ならば、一平くんは一番最初に、算数の勉強用の血圧測定用紙を、3枚集めるために血圧測定に向かうところだが、一平くんは喉が渇いていたのか、この日は一番最初に自動販売機でアイスココアを買おうと思ったらしい。

そして、私の所に硬貨の交換に来たのだ。

無事にアイスココアを買って、診察室でアイスココアを一番に飲んだ。

それから、私に書く身振りをして、鉛筆と紙を要求した。

この2ヶ月間繰り返し、はまっている、「休み 休み せいかつ マクドナルド 11/28(土)」を書きたかったらしい。

付箋紙の小型と大型を渡したが、もっと引き出しの中を探そうとする。

「単語カードが欲しいの?」と聞くと、そうだった。

「きょうは単語カードがないから、売店に買いに行こう」と言うと、理解して移動してくれた。

売店に行くと、単語カードはなく、小型のメモ帳が売っていた。

「これでいいか?」と聞くと、 OK だった。

診察室に戻って、小型の付箋紙9枚と大型の付箋紙9枚に、この2ヶ月はまっている「休み休み せいかつ マクドナルド 11/28(土)」を書いた。

なぜかわからないが、私にも2枚の付箋紙に、同じことを書くように要求してきた。

許可を得たかったのだろうか。

賛成してほしかったのだろうか。

私もそっくりに書いた。

「生活」とは、お母さんとの(土)(日)の自家菜園での水くれのことだ。

そばで、お母さんが「もう終わり」「家でもたくさん書くんですよ」「朝起こしに行くと、11月28日を書いたカレンダーを持って出てくるんです」という。 

想像だが、去年11月28日前後にマクドナルドに行けなかったことがあって、今年は達成しようとこの2ヶ月間夢中になっているのだろうか。

分からない。

一平くんも付箋紙の7枚目くらいから、「終わり終わり」と自分で言い聞かせるように言って、9枚目で終わった。

付箋紙には私が1から9まで数字を書いた。

「10枚でやめようね」と私が数字を書き入れながら予告しておいたら、私との場面では9枚でやんだ。

それから、いつものルーティーンの血圧測定を思い出したらしく、一平くんは私に腕を差し出し、腕を撫でて、身振りで「血圧測定」と伝えてきた。

小学生の時の一平くんなら、私に伝えずに、自分の脳内のイメージだけで、血圧測定に飛んでいってしまう。

一平くんが身振りで伝えてきたことが、私はとても嬉しかった。

500円玉の交換伝達といい、血圧測定の身振り伝達といい、一平くんの身振りによる伝達の成長を感じる。

また、9月までは、一平君は血圧測定をいつも9回行なっていたが、10月は血圧測定が3回になった。

私が、「マクドナルドの無料のナプキンをたくさんもらわないで、3枚にしてね」と、ソーシャルスキルトレーニングの絵を描いたせいで、制限が入力されたのかと思っている。

ソーシャルスキルも、小学生の時には、依頼しても、登録されなかった。

そしていつも通り、血圧測定の用紙を使って、繰り上がり繰り下がりのある加減算とお金の学習をして、病院職員の皆さんに、かりんとうの販売をした。

生涯学習

一平君と小学生や中学生でお別れしていたら、知り得なかった一平くんの成長だ。

28歳まで付き合って、一平くんのコミュニケーションが相互伝達になったことが嬉しい。

24時間付き合っているお母さんは、困ることがもっとたくさんあると思うが、一平くんが身振りや文字で気持ちを伝えるようになった22年間の成長が、私は嬉しい。

心理職の私の定年退職まで、あと5年?10年?か、一平くんと付き合いたい。

生涯学習だ。 

お母さんは今のところ、一平くんをグループホームに入れるつもりはなく、お母さんが見られる限り最後まで家庭で見て、作業所に通わせたいと考えている。 

教材No.40 お金の学習と表記のその後

お金の学習は、たての筆算方式は理解できたのだが、それを横書きの式にすると一平くんの理解が難しかった。

次回は、以下のように、お金を重ねる方式で学習してみたい。

お金の模型は、おもちゃの「パーティークイーン」

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