9 甘えない猫に見えても
甘えて鳴いて、目を見てくれることもあったが、クーちゃんも、抱かれることはそんなに好きな猫ではなく、膝によく来る猫というわけではなかった。
手のかからない、マイペースな暮らしぶりの、クーちゃんだった。
昼間はたいてい、お気に入りの猫用ベッドで、一人で長いお昼寝をしていた。
猫のクーちゃんの後追い
夜も私の枕もとで眠ることもあったが、ペットの炬燵や、猫用ベッドで丸まって眠ることが多いクーちゃんだった。
自分の親の介護の世話が、夜間も必要になって、ある晩から、私が親の部屋のベッドへ移動した。
夜中、私は介護用の狭いベッドで、横向きに寝ていた。
一瞬、何が起きたのかわからなかったが。
「痛い」と思った瞬間、クーちゃんの足が私のまぶたの上に乗っていた。
驚いたことにクーちゃんが、別室へ移動した私を追って、私のベッドに飛び乗って来たのである。
今までのベッドと違って、ベッドが狭いので、70cmのメディカル枕でベッド幅がいっぱいになり、クーちゃんが枕の横に上がれる余地がなかった。
クーちゃんも、ベッドの枕のわきに上がろうとして、私の顔に乗ってしまい、想定外のことになったので慌てている様子だった。
私がいつものベッドにいなかったので、私を追いかけて来て、一緒に眠ろうとしたクーちゃん。
そうか、15歳になったクーちゃんも、私を頼りにしていて、後追いしてくれたのか。
まぶたの痛みの中で、クーちゃんが愛しかった。
皆さんは、部屋を移る時、猫もついて来ると、想定した方が良い。
飼い主を頼りにしてくれる猫
痛みで鏡を見ると、まぶたの一番柔らかいところに、クーちゃんの鋭い爪が当たっていた。
クーちゃんはベッドへ60cmほどジャンプして上がろうとしたのだから、爪を立てるその勢いは仕方ない。
翌日、念のために病院で診察して貰い、抗菌剤を飲んだり塗ったりした。
傷は、1週間ほどでよくなった。
クーちゃんは、狭いベッドで一緒に寝たり、そばの炬燵で寝たりするようになった。
飼い主にベタベタすることなく、マイペースに見えるクーちゃんだったが、飼い主を頼りにしていてくれるということが分かり、嬉しい事件だった。
17歳になり、年を取っていくクーちゃんを、もっと撫ででやりたいと思った。
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