保育園で朝から遊んでいた子どもたちが、小学校に入学して、朝からずっと座って学習するには、様々な工夫が必要です。
今回は、特別支援学級の子どもたちが、授業の後半に手の操作、触覚を使うことで、45分座った授業の事例をご紹介します。
保小連携
入学前にできる工夫は、保小連携と言って、保育園と小学校の文化ギャップを小さくします。
保育園で、朝の会の後は、室内で、ワーク、製作、カルタ、などをします。
ワークは、小学校に向けて、描画や運筆の練習などです。
製作は、季節の工作や、塗り絵、描画、のりハサミの使い方、などです。
かるたは、犬棒かるた、地域のかるた、恐竜かるた、ソーシャルスキルかるた、メモリーカード、漢字カード、算数カード、1~5のトランプなどで、グループ学習、順番を待つ、ルールを守る、友達に譲る、競う、などを身につけます。
お昼を食べた後、午後は、園庭で遊びます。
雨天の日の午後は、読み聞かせ、本を読む、トレーシングペーパーで絵を写すなど、子どもの好きな活動をします。
保育園でも、午前中は座学、午後は元気に遊ぶと、小学校との文化ギャップが少なくなります。
入学後、小学校では、45分の授業の中の15分に一度は、身体を動かせる活動を取り入れます。
そうやって、動きたくてしょうがない子どもたちの、一番多動な6~7歳の時期を理解して、保育と教育が歩み寄るのが保小連携です。
感覚を満たす学習と言葉の発達順序の理解
特別支援学級の低学年の児童3人が、15分~20分くらいは集中して座っているが、あとは座っていることが難しいという相談を受けました。
特別支援学級の低学年の児童の発達年齢は4~5歳です。
感覚の発達と言葉の発達は、以下の図のようになります。
先生の音声説明は、児童に脳内イメージを要求する、最も高級な、聴覚系の言葉のやり取りです。
テレビモニター、教科書のカラーの絵、プリントの図は、脳内イメージを脳外に見せる視覚系の言葉で、児童の理解とやる気を助けてくれます。
視覚系の助けで、特別支援学級の児童が15分~20分、教科書とプリントに取り組めたなら、最高!と私は思います。
15分~20分の集中と座学を、45分に伸ばすには、授業の後半に、触覚系の学習が必要だと考えました。
集中とやる気を高める自己決定
5時間目、担任の先生が、1年生の算数「いろいろな形を調べよう」の授業を行ないました。
私はT₂支援者として、児童の脇にかがみ、「見よう」とテレビモニターを指さしたり、「今は先生の話を聞こう」と、児童の発言を待たせたりします。
担任の先生の前半20分の授業の後、後半を私が引き受けて、授業をやりました。
3つの箱を用意して、教卓に並べ、それぞれの教材を入れます。
箱には1、2、3の数字が貼ってあります。
こうしておくと、先々、1~5まで、1~10まで、学習スケジュールを伸ばすことが可能になります。
一人一人の進度に合った、国語プリント、算数プリントも用意しておきます。
「色々な形が調べられた人は、前に来てください」
教材を取りに行くという、正当な理由で、身体を動かせることも、多動な児童には必要です。
児童3人のスピードが違うので、早い人から順に、私のところにやってきます。
「3つの箱から、好きな勉強を選べます」
子どもたちは新しい教材を、興味深そうに見ます。
「使うものが決まったら、その前に、このプリントを1枚仕上げて、見せてください」
やる気になったところで、学習プリントを2枚見せて、選ばせます。
集中や意欲を高めるには、自己決定が大事です。
教材も選ばせ、プリントも選ばせます。
自分で選んだものに対しては、やる気が高まります。
授業は聴覚系、視覚系、触覚系を組み合わせる
子どもの感覚を満たす順序は、手➡目➡耳の順で、触覚系➡視覚系➡聴覚系です。
子どもは身体全体を動かすことが好き、手で触ることが好き、目で見ることが好き、聞いてイメージすることは大変です。
同様に言葉の発達の順序も、実物が分かりやすい➡身振りからはイメージしやすい➡画像も分かりやすい➡文字は音声記憶を助ける➡音声が最も忘れやすい、です。
先生の音声で、子どもの脳内にイメージを持たせる、聴覚系の授業は、視覚系を見せて脳内イメージを助け、子どもの理解・集中・意欲が途切れたら、触覚系の教材を使います。
1人は、「おはじきをつまんでペットボトルに入れる」指先の微細な調整を楽しんで、プリントと交互に、おはじき入れを3回楽しみました。
おはじき入れの区切りごとに、プリントもやってもらいます。
タイマーで、おはじき入れを計測してやると非常に喜んで、授業の後半も座っていました。
2人目は、保育園の頃から、恐竜が好きです。
65ピースの、恐竜のパズル、ミッキーのパズル、スイミーのパズルを見せたところ「恐竜のパズル」を選んで、プリントをやってから、最後まで着席してパズルに取り組みました。
パズルの下にはカラーコピーが貼ってあり、構成はやさしいです。
この次はパズルの下絵に白い紙を貼って、下絵なしにすると、もう一度楽しめて、時間もかかります。
3人目は、離席とおしゃべりが一番多い児童ですが、プリントをやってから、ダイソーの「くだものメモリーカード」を選びました。
はじめてのとき、メモリーカードはそのままでは枚数が多すぎるので、半分ずつに分けてやってもらいました。
担任の先生と1対1で、2回繰り返し、神経衰弱をやって、2回とも先生に勝って、とても喜び、ずっと着席していました。
この時「友達も考えているから、黙ってやろう」という、ソーシャルスキルをLet’s~で入力します。
楽しい活動、嬉しい活動の時に入力すると、ソーシャルスキルも形成しやすいです。
子どもの失敗を正そうとする、ミスした時のソーシャルスキル入力は、うまくいきません。
メモリーカードや、漢字かるたは、3人と先生の4人で、また次回楽しめます。
授業の冒頭、合間、後半に触覚系の学習を取り入れる
子どもの感覚の発達、言葉の発達を頭に入れておくと、触覚系の学習を取り入れることで、子どもの集中と着席を延長することができます。
子どもたちが、ブロックが好き、レゴが好き、ゲームが好き、YouTubeが好き、というのは触覚系の操作と、イメージが見えている視覚系が、たっぷりあって楽しいからです。
手を使う、触覚系の活動を取り入れると、子どもたちは、療育、保育園、特別支援学校、特別支援学級、通級指導教室、通常学級でも、集中し、落ち着いて、45分着席していることが可能になります。
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