
3 花ちゃんの探索行動
花ちゃんは真夏に我が家にやってきた。
花ちゃんの我が家への適応を心配した保護主さんは、使い慣れた品々をたくさん持たせてくれた。
花ちゃんお気に入りの鉱物砂の猫トイレ、匂いのしみ込んだ毛布、使い慣れた円形の爪研ぎ(クリーンミュウの丸型爪磨き)、保護主さんお手製のシャカシャカのおもちゃ、大好物のいなばのちゅーるアペティートなどだった。
花ちゃんお輿入れの当日は、保護主さんが毎週末の譲渡会への往復に使っていたキャリーバッグで、花ちゃんを車に乗せて送って来てくれた。
かつてのトライアルで花ちゃんが一晩中鳴き叫んで一晩で返されてしまったことを保護主さんは心配していた。

保護主さんは長年ボランティアで保護猫を育てている、猫の生態に詳しい奇特なかただ。
我が家の2階で保護主さんと一緒にキャリーバッグから花ちゃんを放した。
花ちゃんは腰をかがめて這うように移動した。
新しい場所が怖いのだ。
脅かさないように遠巻きに見ていると、花ちゃんは段々と探索を始めた。
その様子を見て、保護主さんも少し安心して譲渡会場へ帰られた。
花ちゃんは家じゅうを探索し、夜は2階の机の下の薄暗い場所にこもった。
狭いところが安心するのだ。

1日1食だけでじっとしていた。
ここはどんな場所なのか。
いつもの場所を失くした私はどうなるのか。
そういう不安でいっぱいだったと思う。
花ちゃんはシーンと静かな夜中の3時ごろに低い姿勢で見回りを再開し、探索をした。
新しい場所の安全を丁寧に確認していた。
2日目は食事やトイレに出て来たが、やはり机の下が花ちゃんの安全基地だった。
3日目は何度も見回りと探索に出て来るが、ほとんどは机の下やカーテンの影にいた。

食事は、保護主さんに聞いていたヒルズの消化ケアi/dチキン味を購入しておいた。
花ちゃんは食べてくれたが、緊張と不安で食事量も少なく、ちょっと便秘したらしい。
数日で花ちゃんの歩くときの腰も高くなり、1日2食食べるようになり、ウンチも漸く解決した。
体重計に抱いて乗り、後で私の体重を引くと、花ちゃんの体重は6.5キログラムだった。
猫を膝に乗せたいと思っていた私だったが、さすがに花ちゃんの重さは抱っこを躊躇させる重さだ。

不安で食事量が少なく、排便量も回数も少なめで、花ちゃんとしては始めは少し痩せてしまったようだった。
2週目からは、明け方と夕方の2回の見回りで、我が家に慣れていった。
3週目は気楽に家の中を歩くようになり、排泄後の報告を小さい可愛い声で「ニャー」と教えてくれた。
新しい家に慣れるまで、花ちゃんの付近に人間がいないこと、安心な自分のケージ、以前から使っていた爪研ぎ、使っていたトイレと猫砂、これまでと同じ食事が、花ちゃんの順応にとって大切な要素だった。

保護主さんの、周到な準備とメールでのアドバイスのおかげで、人見知りの強い花ちゃんも少しずつ我が家へ慣れてくれた。
安心した花ちゃんの体重は6.75キログラムあった。
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