32 飼い主を頼る
住み慣れた家を失ったお母さんは、人間の幼児のように、私の後追いをするようになった。
朝、私が洗面台に立ったり、外出着に着替えたりすると、「ニャーニャー」鳴いて、足元に来る。
「置いていかないでくれ」と、いわんばかりに、私のくるぶしあたりを甘噛みする。
お母さんは、常に私が見えるところにいて、私から離れない。
引っ越しで甘える猫になる
私が玄関を出るまで、私の行く所行く所に付いて歩く。
家族の話によると、私が出かけている間は、誰もいない部屋の隅や、押入れの奥や、誰もいない炬燵でじっとしている、とのことだった。
夕方、玄関で私の帰りをじっと待っている。
お母さんのお出迎えは、うれしかった。
お母さんは2階にいても、私が帰る時刻に玄関でドアが開く音がすると、2階から階段を駆け下りてくる。
夜は夜で、夕食後は8時前から「寝よう寝よう」という感じで、ニャーニャー鳴く。
そして、引っ越してからは、毎晩私のベッドで、私に身体をくっ付けることで安心するのか、一緒に眠るようになった。
懐かれると、可愛い。
お母さん猫のフミフミ
子猫たちがいたころには、一度も見たことがなかった、お母さんのフミフミも、たびたび見かけるようになった。
お母さんにとって、引っ越しは災難だったが、私はお母さんの順応力の高さを見せてもらい、私という基地を頼りにしてもらえたことは、飼い主としての喜びだった。
猫の名前を覚えることが出来なくなった高齢の家族も、「猫ちゃん、猫ちゃん」と呼びかけては、満面の笑みを浮かべていた。
偶然出会った、野良だったお母さんに、小さいけれど、かけがえのない幸せを貰っていた。
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