
10 猫の出入り口
11月になり、寒い日が増えた。
猫の出入りのために常時サッシを開けておくのは室温をひどく下げる。
猫たちは庭に面した居間で寝起きしていた。
母似が家の中で初めて眠った晩は夜中の3時まで走っていて、朝5時にはもうまた駆け回っていた。
野良だったお母さんはこれまで通り、早朝、縄張りの見回りに行こうとして毎朝鳴いた。

外へ出してくれという要求の鳴き声だった。
猫の出入りのための寒風と早朝の鳴き声には参った。
私は猫の雑誌で見かけた、猫が出入りできるキャットフラップをガラス屋さんに依頼して、出張で取り付けてもらった。
外猫との縄張り争いは心配ではあったが、これまで外で自由に暮らしてきた我が家の猫たちが、キャットフラップで自由に出入りできれば、これまでの野良の自由を保てる。
しかも私が毎朝開けてやらなくて済むし、サッシを開けたまま寒いということもなくなる。

私はお互いに都合がよいと考えた。
一番先にキャットフラップを頭で押して上手に使ったのは、物怖じせず人懐こく新し物好きで狩りに出掛ける灰色だった。
クロも、遠くから走って来てフラップに突進する大雑把なやり方で、二番目に出入りが自由になった。
お母さんと母似は用心深くなかなかキャットフラップに慣れないで使いたがらなかった。
お母さんはキャットフラップを好まず、鼻先をフラップに付けて押すことを何とか回避しようとして、「ニャーニャー」鳴いて、フラップを私に開けさせるのだった。

子猫の顔が一匹一匹違うように、キャットフラップへの慣れ方も、一匹一匹違った。
猫でさえそうなのだから、人間の子どもだったらなおさらだ。
人も猫も新しいことへの踏み出し方や馴れる時間が一人一人違う。
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