子どもが言葉で説明しない行動の意味を読み取るかかわり方

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梅津八三のいう、言葉の発達の経過について、「言語行動の系譜」を紹介しました。

身体の生理的な感覚刺激で赤ちゃんが泣く状況、相手に身振りや言葉で伝える意図がまだない行動を「自成信号」と呼びます。

赤ちゃんは空腹やオムツの濡れの気持ち悪さを感じて、その感覚刺激に対して何らかのイメージを持って泣いている状態、赤ちゃんの脳の中の名前のまだないそのイメージを「表内系の信号」とします。

赤ちゃんが泣くと授乳の世話をする、赤ちゃんが泣くとオムツを取り替える、赤ちゃんと世者者がやり取りを重ねていくと、赤ちゃんは世話して欲しい時にぐずったり泣いたりする、「表出系の信号」が生まれます。

ぐずっていた赤ちゃんを抱き上げたら笑顔になった、その時の赤ちゃんのぐずりは、表出系の信号ですね。

赤ちゃんが言葉で説明しない行動に反応して、大人が世話行動をする、その繰り返しが応答関係、コミュニケーションの基礎になります。

言葉のある乳幼児はもちろん、音声の言葉の発達が遅れる乳幼児に対してはなおさら、「自成信号」「表内系の信号」を読み取って、「表出系の信号」を形成することが、非常に大事です。

それが、療育、統合保育、特別支援教育と呼ばれる係わり方、育て方です。

子どものことばの発達を理解する梅津八三の「言語行動の系譜」

ペットとの関係や大人同士の関係も同じです

現代では今や家族の一員となった、犬や猫の行動を読み取ることも、音声の言葉を持たない動物の意図を読み取る=「自成信号」「表内系の信号」を読み取ることになります。

野良猫クロちゃんの不安と恐怖を、どうやわらげたら、我が家に適応してもらえるか?

食べることが大好きな花ちゃんの肥満を、どうしたら、ダイエットできるか?

猫の行動から猫の考えを推測し、お互いに起きやすい適応を、私も探っています。

動物が好きで、動物看護師や獣医さんをこころざすかたは、イクメンになりそう?ですよね。

ネットのイラストから

大人の発達障害の方が、苦手だと言われる読み取りがここです。

同僚がつらそうにしていたら「どうしたの?」とたずねる。

同僚が残業していたら、「手伝おうか?」と声をかける。

手伝えないまでも「お茶を入れたよ」とサービスして、「悪いけど、お先に」と、すまなそうに帰る。

そういう、相手が言葉で言わない状況でも、相手の行動を読み取り、相手が喜ぶ行動をとることが苦手だと言われています。

モラハラ、パワハラと言われる、ハラスメントも、離縁の一因も、相手の困ることや相手の喜ぶことが分からない、似た状況ですね。

自閉症と知的障害のある方に見られる行動を読み取る

自閉症の方がクルクル回ったり、太陽の光を見たいのか手をヒラヒラさせたりするのは、誰かに対しての合図として行なっているのでないから、自成信号に近く、脳内の表内系の信号にとどまっています。

この「クルクルやヒラヒラ」の自成信号・表内系の信号を共感的に読むことが、育児や教育には非常に大切です。

消去しようと係わるのでなく、共感して係わると、その先の変容につながります。

大人が共感できないで、その行動を、取り除こう、消去しようとして係わると、子どもは快感を奪われて、パニックになります。

「クルクル回ると(自分の眼球運動が感覚的に)楽しいね」

ネットのイラストから

「手をヒラヒラさせると(光が変わって)キレイだね」

ネットのイラストから

子どもの好きなこと=確定域かくていいきへの共感ができるかどうかが、子どもに寄り添えるか寄り添えないかのポイントです。

寄り添うとは、その子の思考で考えるということです。

その子が、合図として出しているのではないのだけれども、換気扇の前でクルクル回っていたら、換気扇をつけてやる。

家庭や街中で見かける換気扇
保育園の天井扇

するともしかしたら、換気扇をつけて欲しくて、私がいるときに、私の目の前で、クルクル回るようになるかもしれない。

その子がクルクル回っているのを見たら、私も指でクルクルと円を描いて見せたり、換気扇を指差したり、換気扇の写真を手渡したり、言葉で「クルクル、クルクル」と言って見たりする。

そしてついに、彼が壁のクリアポケットの換気扇の写真を手に取って、私に渡してくれたら、「換気扇を回してくれ」という表出系の信号になる。

ポケットが浅いタイプがなかなか売っていない。セリアのウォールポケットクリア7段を1~2段にカットすると使いやすい。

また、例えば、トイレに行きたい子が、身体を曲げていたら、私のお腹ををポンポンってする合図を見せて、「トイレ行きたい。」、「分かったよ。トイレ行こう。」と身振りで話す。

ネットのイラストから

身振りの他に、トイレの写真を渡したり、トイレのマークを見せたり、トイレの方向を指差したりする。

ネットのイラストから

まだ合図になっていない自成信号を読み取り、脳内の表内系イメージを読み取って、それをお互いの合図=表出系にしていく

音声のある発達障害の子どもでも説明しない行動を読み取る係わり方が大事です

音声の言葉のある子どもさんでも、同じです。

その子の持ち物や興味関心に、ひとこと「何々だね」と共感すれば、仲良くなれます。

子どもの好きなこと=確定域へ共感すると、子どもは共感してもらって嬉しくて、自全態じぜんたい=満足に至ります。

目を合わせてきたり、笑顔が出たりします。

確定域で自全態に至ると、その満足した嬉しい勢いで、一緒に、苦手なことや新しい行動にも踏み出せます。

身振りなどの表出系、トイレマークなどの形態質系、音声や文字の分子合成系を使える子どもさんになると、コミュニケーションも学習も寄り添いも、起こしやすいです。

音声を話せる子どもさんなら、行動の意図や気持ちを、説明してくれますからね。

発達障害があって、音声で説明しにくい子どもさんの場合には、音声がない子どもさんに対するように、その子の行動に共感して、その子の気持ちを読み取ることが必要になります。

「並ぶ場所を探してるの?誰の後ろかな?」ネットのイラストから

まとめ

1.相手に伝える意図のない、自成信号の意味を読み取る。

2.脳内イメージを楽しんでいる、表内系の信号を読み取って、共感する。

3.相手に伝える意味で出す、表出系の身振り信号を、共有する。

4.お店のマークやトイレマークのような形態質系の信号を、活用する。

5.音声や文字のような、分子合成系の信号を、形成する。

子どもが言葉で説明しない行動の意味を読み取る、そういう係わりをしたいですね。

梅津八三の心理学「言語行動の系譜」

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