29歳の自閉症の一平くんとの学習は、22年間で320回を超えました。
一平くんは音声言語がありません。
行動や目線や身振りで、考えていることを伝えようとします。
一平くんは、週休4日です。
一平くんの楽しみ
かりんとうを作る作業所のお仕事は、一平くんが自分で決めて、週3日午前中だけ行っています。
月に、6000円くらいのお給料をもらえます。
長いお休みの時間を、一平くんに付き合うのは、お母さんです。
デパート・スーパー・ホームセンター・コンビニエンスストア・ドラッグストア・家電量販店・モスバーガー・ファミリーレストランに毎週行きます。
低山へのドライブを、毎週しているときもありました。
曜日とコースが決まっていて、そのルーティンを一平くんは守ります。
守れないと、お家で地団駄を踏んだり、大声をあげたり、一晩中寝なかったり、ノート1冊全部にお店の名前を書き続けたりするのです。
外側に合わせる学生時代を過ぎて、現在は自分を強く主張する一平くん
私は病院の療育の仕事で、長いこと、一平くんの学習=革生行動だけに付き合ってきました。
一平くんの日常生活=緩衝行動や救急行動を支えてきたのは、お母さんです。
そのお母さんの努力の上に立って、私は22年、仕事をさせてもらってきました。
前回の療育で、お母さんから、お家で一平くんのこだわりが激しく、お母さんもお家でほとほと困ってしまった、と聞きました。
私は「こだわりを和らげる薬もあるので、医師に受診して相談するのはどうか」と話しました。
お母さんが、「薬があるんですか」と、珍しく同意なさいました。
お母さんも眠れず、幾度も困っていたのだと思います。
1ヶ月後、お母さんに再度尋ねると、お母さんは「自分が一平のこだわりに慣れてきて、今回はもう少し凌いで行けそうだ」とおっしゃいました。
例えば、一平くんがパンのシールを集めていたが、シール集め期間が終了となり、かつては終わりが分からず大騒ぎになったそうです。
ところが今回は、終わりがわかり、一平くんがその経験を以下のように、私に付箋紙に書いて見せてくれました。
たぶん、お母さんが、販売期間をカレンダーと一緒に、一平君に終わりの日の予告として、事前に何度も見せたからだと思います。
「集める期間に、終わり来ることが僕もわかった」という意味で、私に付箋紙へ書いて伝えてくれたのです。
こんな風にして、シール集めに期間があるということを一平くんが知り、こだわりが終わり、お母さんがほっとする日が来ました。
一平くんが販売期間や、終わりの期日を獲得したことで、今回のお母さんの表情は、前回よりも明るかったです。
こだわりを軽減する薬と病院
一平くんのこだわりがかなわないときの激しい苛立ち、お母さんの SOS の時に備えて、入院施設もある、精神科の病院の院長先生の名前を、私が挙げました。
2010年、18歳の時に、児童相談所の障害判定で、一度その先生に診てもらったことがあると、お母さんもおっしゃいました。
22年間かかっている、当院小児科の医師も快く、その病院へ紹介状を書いてくれることになりました。
これでまた一つ、お母さんが安心して、毎日を一平くんと過ごせることになります。
お母さんは、自分が元気なうちは、一平くんをグループホームや施設に、手放すつもりがありません。
どこまでも家庭で、一平くんが自由に振る舞えるように、一平くんの望みを尊重して生活しています。
お母さんには、一平くんを自閉症として産んだ罪償感と、重度判定にしか育てられなかったという負い目があります。
それは百万分の1も、お母さんのせいではないのに、です。
一平くんの音声の代わりの iPad
小さなことでいいから、一平くんとお母さんが、楽しい毎日であるといいと思います。
一平くん用に注文した iPad は、家電量販店では3ヶ月経っても、注文者のところに届きません。
私も諦めて、Apple にじかに、ネットで注文し直してみました。
8月17日に、3週間で納入されました。
一平くんと、病院内で、かりんとう販売の音声発話に、私の iPad をトーキングエイドとして使って来ました。
「こんにちは」
「かりんとういかがですか」
「1つ105円です」
iPad のキーに1つずつ触れる直前に、ひらがな文字から一平くんが音声を出すことが分かり、お母さんも一平くん用に iPad を購入しようと思ってくれました。
アプリ「かなトーク」は iPhone・ iPad には、無料でダウンロードできます。
また、一平くんが iPad で、絵カードコミュニケーション「えこみゅ」を見て、気持ちの言葉を言える・指差すようになる、学習=革生行動として使う予定です。
「えこみゅ」の他のアプリには、「TASUKU たすく コミュニケーション」と言うアプリもあります。
さらに、普段はダウンロード代が5000円なのですが、4月の自閉症啓発デーに無料でダウンロードすることができた、「Voice4u」もあります。
iPad が届いたら、少しは一平くんのお家での時間も潰れるのではないかと、考えています。
我々がパソコンやスマホをだらだらと見るように、暑い日・寒い日・台風の日などは、一平くんも iPad を眺めて自宅で過ごせたらいいです。
一平くんにとってちょうど良い緩衝行動はないか
6月、ダイソーで、アイロンビーズというものを見つけ、 子どもたちの間で流行っているということを知りました。
興味のある好きなマリオを利用してコミュニケーションを拡大する
アイロンをかける時には、ビーズがアイロンの底面にくっつかないような、専用の断熱ペーパーが必要です。
アイロンビーズで、一平くんがお家で、好きなお店のマークなどを作ったら楽しいのではないかと思って、ダイソーで購入してみました。
かつて、一平くんは、電車の風景模型作りに、熱中したことがあったと、お母さんから聞いていたことを思い出したからです。
ダイソーとセリアで、アイロンビーズを買い、ビーズを収めるクリアケースも買いました。
7月末の学習で、学習の最後にアイロンビーズを一緒にやってみたところ、一平くんはすぐに取り掛かかりました。
準備した広告を下敷きにして、あっという間に、ヤマダ電機とケーズデンキのロゴを作って見せてくれました。
お家に持ち帰り、お母さんとアイロンで仕上げる予定になっています。
最近では、アイロンより危険度の少ない、水でくっつけるビーズが流行っているらしいです。
セリアにもありました。
売り切れや、生産終了になる前に、一平くん用に、たくさんアイロンビーズを買い込みました。
アイロンビーズ工作は、おうちで、かえってお母さんの手間を増やしてしまうかもしれないのですが。
一平くんが、お店での消費活動だけでなく、何かしら作業的な生産活動ができると良いなぁと思います。
お母さんは、一平くんと一緒に畑で野菜をに育てたり、一平くんが「生活」と呼んでいる水くれ仕事に一緒に行ったり、一平くんにお料理をさせたりしてくれています。
我が子だから可愛いとはいえ、29年間、自分の時間をすべて捧げているお母さんに、本当に頭が下がります。
子育ての金メダルというのは、ないのでしょうか。
自閉症、子育てオリンピック、みたいな福祉表彰事業があってもいいと思いました!
猫ちゃんブログへのコメント
日常生活で緩衝行動や救急行動を支えてくれるお母さんがあって、革生行動を輔生する仕事ができる、そうですねぇ。
子育ての金メダル、いいですね!
「このお母さんの銅像を建てたらよい」と何人ものお母さんについてそう思ったことが私も何度もありました。
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金銀銅をつけるのは違う気がして、みんな同じメダルに。