発達障害児は なぜ通りすがりに友達を叩くのか?

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学校の廊下で、後ろから走ってきた発達障害特性のある子どもさんが、友達をポンと叩いて、行き過ぎることがあります。

二人が仲良しで、叩く力もポン!と弱ければ、悪気のない、呼びかけの代わりの「挨拶」と思ってもらえそうです。

しかし、二人の仲が悪く、叩く力がバシッ!と強ければ、たとえ「よっ!○○くん、お先に。」という、呼びかけの意図の挨拶であっても、「痛い、理由もなく叩くなんてひどい、謝れ」ということになりますね。

相手の立場に立つというスキルが必要

行動のスキルには、①本人の視点、➁相手の視点に立つ、③全体視(客観視・自己モニター)が必要です。

同時に、年齢や学年が上がるにつれて、④物理的な身体接触から、言語的な音声会話に移行できることが必要です。

発達障害特性があると、①の本人の視点だけになりやすく、➁相手の視点に立つ、③全体視、④触覚を満たさないで言語的な音声会話をすることが難しいです。

悪意のなかった、初発の行動に、共感する

それゆえ、まず、第一の視点、本人視点を見抜いて共感することが、初発を肯定することになり、パニックや爆発および逆上を防ぐことになります。

「呼びかけだったんだね」という、初発の行動意図への共感です。

「叩いた君が悪い」と、結果に注目したダメだしをすると、パニックや爆発あるいは逆上を引き起こします。

発達障害の子どもさんは、障害物があった時、回り道をできないで、踏んで乗り越えていくような乳幼児期がある子どもさんです。

それで、自分がまっすぐ進もうとすると、「邪魔だ、どけどけ」とぶつかることになります。

かつて、私が学校で見たことがある状況は、小学校2年生の子どもさんが、バケツで砂場に水を運ぼうとして、バケツの水しか見えていないので、進行方向の直線上にいた、砂場にしゃがんでいた仲間が見えず、仲間に水をかけてしまった、という出来事がありました。

悪気は少しもない、不器用な彼が、水を運ぼうとしただけで、起きたことでした。

見ていた私が「バケツしか見ていなくて気が付かなかった、ごめんね」と代弁したら、彼もすぐに「ごめんね」と言いました。

不注意を責められるのでなく、自分の行動の意図を解説してもらったので、ごめんねと言えたと思います。

発達障害の特性があると、障害物や周囲の状況のキャッチの仕方が不器用になります。

目の前の人を避けられずにぶつかりやすい子ども、触覚を満たしたい子ども、音声の呼びかけ会話が苦手な子ども、相手の気持ちを想像しにくい子ども、などの理解があると、共感の言葉をかけられます。

犯人探しの指導よりも、両者に共感する指導をする

「誰が悪いかを決めて、悪いことをした人が謝る 」という犯人探しの指導は、発達障害のある子どもさんに拒否されます。

本人の側からは悪意はなかった、でも相手の立場にしてみれば、急に叩かれて痛くて困った、叩かれる理由なんてないのにと悲しかった、という、加害者と被害者、双方への共感の指導が必要です。

「挨拶だったんだね」あるいは「悪気はなかったんだよね」と通訳

「後ろからなので、ビックリしたみたいだよ」

「先生も、後ろから急に肩をたたかれると、いつもびっくりするんだ」 ネットのイラスト画像を利用

「思ったより力が強くて、痛かったみたいだ」

「友達が泣いちゃったから、君もビックリしたね」

「挨拶のつもりだったんだよ、ごめんね」あるいは「意地悪のつもりじゃなかったんだよ、ごめんね」って言えるかな。

固まって無言であれば、「きょうは先生が、代わりに謝っとくからね」

「次のときは、どうしたらいいかなぁ」

「考えといてね」

友達を見かけたら、追い越すときに「よっ、○○、さき行くよ」って言えるといいかな。

「次はできるよね。」

ネットの吹き出しイラストを利用

 次にも同じことが起きたら、「トラブル予防には廊下は歩くといいよ」というアドバイスもできます。

「先生からのお願いは、廊下は歩いてくれるといいな。すると、ぶつからないし、挨拶もしやすいよ。頼むね。」

運動感覚を満たしたい、発達の順序を理解する

通りすがりに友達を叩く行動を起こす子どもさんは、授業中などもいつも何かをいじっていたい、触覚を満たしたい子どもさんが多いです。

安全ピン、カッター、ハサミなど、危険なものをいじっていたら、文房具と交換しましょう。

でこぼこの消しゴム、鉛筆キャップ、10 cm ミニものさし、輪ゴム、ネバネバセロテープ、などはどうでしょうか。

発達の順序は、触覚で考える➡視覚で考える➡聴覚で考える、の順ですが、発達の下位の、触覚で考えることが好きな子どもさんです。

聴覚で考えることがよく発達した大勢の子どもさん達は、何でも音声の会話で自分の気持ちを表わします。

ところが、触覚で考える子どもさんたちは、何かを触らずにはいられない、呼びかけの言葉の代わりに、手で仲間の頭を叩くことなどが起きやすいのです。

以上のような発達特性を理解して、

1.廊下は歩こう

2.挨拶は言葉でする

3.後ろからだと相手に分からない

4.悪気がなくても、叩くと相手は困る

などの指導を、全体の場面で、学習としてすると良いと思います。

肩には触れないで「ねえ、何々くん」と、名前を呼ぼう。

道徳の授業で、「相手はどう感じたか」などを、全体で話し合うと良いと思います。

その学習が一度できていると、「この間、授業で勉強したね。覚えているかな。」と、いつも、行動スキルの確認や振り返りに、「 悪気がなくても、叩くと相手は困る」という他者の視点を 持ち出すことができます。

すると、反省を求めたり、謝罪を求めたりすることも、可能になります。

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