35 お母さんの皮膚炎
親を介護することになり、実家へ引っ越してからの5年間、夜になってお母さんと過ごすひとときは、私の癒しの時間だった。
92歳のヤエさんは、猫の名前を覚えられずに、「猫ちゃん、猫ちゃん」と撫でて可愛がった。
撫でられている猫よりも、撫ででいる人間の方が幸せそうだった。
認知症が進行していくヤエさんに、猫はただ側にいるという、静かな優しい寄り添い方をしてくれた。
皮膚炎の始まり
お母さんは、10歳になっていた。
人間で言えば、60歳くらいだ。
春、お母さんに皮膚炎が出た。
獣医さんに診てもらうと、「自己免疫不全で、皮膚炎を繰り返す子です」と言われた。
強い塗り薬を付けるとよくなったが、夏にまたぶり返した。
エリザベスマフラー
エリザベスカラーは重そうだったので、首に柔らかい木綿のハンカチを巻いてやり、お母さんが後ろ足で皮膚を搔かないようにした。
長袖のキャットウェア
また、ダイソーの猫用のウエアに袖を縫い付けて、お母さんが肩や脇の皮膚を舐めないようにもした。
長袖のキャットウェアならば、こんな市販品もある。
薬を付けると炎症はよくなるが、新しい場所に炎症が起きるという具合で、完治しなかった。
私は、ただの皮膚炎と、軽く考えていた。
獣医さんが言った、「自己免疫不全」を調べもしなかった。
お母さんに病魔が忍び寄っていることを、つゆほども考えなかった。
親の介護に気を取られ、お母さん猫の健康をよく見ていなかった。
お母さんの皮膚炎は、秋にはいったん収まったものの、翌年の夏にまた現われた。
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