教材No.44-1 子どもの認知や心理に基づいた教材
中野尚彦の教材の発想は、天才的である。
野生児のビクトールに直接法(カップに隠されたくるみを記憶しておいて取る)を授けた、イタールをしのぐ発想だ。
もちろん、初期学習の中島昭美や水口浚、盲ろう二重障害児「しげ子とただお」を教育した梅津八三の教材開発に匹敵する発想を持つ。
中野は、金沢の木村允彦氏に並ぶ、日本屈指の心理学的な教材の開発者だ。
木村氏のアカシヤこどものへやホームページへアクセスすると、Google の警告「kasper3taro.com への接続は安全ではありません。この警告は、サイトが HTTPSに対応していない場合に表示されます。」が出ますが、https の S がないだけで、アカシヤこどものへやのホームページは安全です。
中野や木村氏の教材は、事例研究で、ただ一人の子どものために発明される、世界で唯一の教材だ。
時間と労力のかかる、高度な工作性のために、教材の工作を引き継ぐ力のある者は、なかなか現われない。
教材No.44-2 A と B は 同じ
例えば、下の画像は、だんご差し教材を算数文章題に応用した「 A と B は 同じ」の教材である。
これは、材料を買い集め、真似して作るだけでも、丸1日かかる。
以下の投稿の、東京書籍の算数文章題教科書問題とは大いに異なる。
算数文章題比較構文のわかりやすい提示方法 | 猫ちゃんブログ
教科書問題の教材は平面的呪術的(お説教のようなおまじない)、中野の教材は立体的工作的(物理的)だ。
梅津八三が「心理学的輔生工作」と呼ぶ、まさにそういう教材だ。
この教材は、提示されるだけで以下のような文章を、教材が語っている。
青が 4 あります。
赤が 4 あります。
青と赤は 同じです。
教材No.44-3 A は B と同じより 多い・少ない
次の教材も、提示されるだけで以下のような文章を、教材が語る。
青が 4 あります。
赤が 5 あります。
赤は 青より 1 多いです。
青は 赤より 1 少ないです。
だんごの多い・少ないは、透明アクリル板で、視線の同定の代わりに、手の運動操作によってクリアにカットされる。
もちろん、これまでも何度も紹介してきたように、上記の文章の単語カード語群を用意しておき、事象に合わせた文章を作ってもらうことも、重要である。
(単語カード語群の例)能動文・受動文の形成の方法 | 猫ちゃんブログ
またその逆に、文章を読み取って、それに合う事象を作れるか、も学習する。
中野は大勢の子どもに、上記の教材による、多少比較構文を学習させて来た。
こんな発想がどこから生まれるのか、中野の脳内をのぞいてみたい。
子どもの示す行動とその意味を考え、発達の最近接領域(レフ・ヴィゴツキー)との往還によって生まれる、天才的な発想だ。
教材No.44-2 A と B は 同じ。B は C より 多い・少ない
3者の比較もやれる。
黄色は 1 あります。
赤は 1 あります。
青は 2 あります。
黄色と赤は 同じです。
青は 赤より 1 多いです。
運動感覚を満たしながら、数量を確定し、視線で見ているラインを透明アクリル板で物理的にカットして、脳外に見せることで、 同じ・多い・少ないを確定する。
目に見えない視線が、目に見えるアクリル板になったのだ。
これ以上の教材は、今のところ、世界にまだない。
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