言葉の発達が遅れる子どもの言葉の獲得

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言葉を獲得していく経過について、梅津八三(うめずはちぞう)の「言語行動の系譜」、中野尚彦(なかのなおひこ)の「文構成行動の図式」を、これまでに紹介しました。

今回は、天野 清(あまのきよし)の「文の獲得過程」を紹介します。

天野は、言葉を獲得していく経過を、構造化と変換過程と説明しています。

梅津、中野、天野が教えるように学習すると、自閉症スペクトラムの子どもも、学習障害の子どもも、事象を言葉に変換し、文章を獲得していきます。

天野の、言葉の構造化は、6段階あります。

①名義化

➁性質・行為の抽象と一般化

③関係の定位

④語クラスの形成

⑤語の選択

⑥音声化

それぞれ詳しく見ていきましょう。

名義化

事象に名前をつけます。

パパ ママ りんご バナナ トーマス ピカチュウ 新幹線 丸 三角 四角 などです。

音声が出なくとも、実物が言葉となるレベルです。

私がアメリカで暮らすと、名義化のレベルで暮らし始めます。

ヘレンケラーが、水に触れながら、「ウォーター」と名前をつけた瞬間も、彼女の名義化の始まりですね。

性質・行為の抽象と一般化

次の段階は、赤い・青い、大きい・小さい、など、性質を抽出し、名前をつけます。

形容詞の学習です。

食べる・飲む、など、行為にも名前をつけます。

動詞の学習です。

①「色」は実物の中に内包されている特性なので、名前を付けやすいです。

➁「大小」になると、2つを比べて名前をつけるので、見比べる力が必要です。

③それを連鎖語にすると、「大小」+「色」+「名称」の構造化が始まります。

小さい+青い+四角、大きい+赤い+丸、など、形容詞と名詞の、多語連鎖の学習です。

大きさ・色・形の文を作る⇔文に対応した大きさ・色・形の事象を選んでくる、学習です。

大きい赤いリンゴ、小さい黄色いバナナ、大きい青いトーマス、小さい緑のパーシーなど子どもの好きな事象と写真にすると、子どもは学習に取りかかりやすくなります。

連鎖語については、以下の投稿もご参照ください。

単語から文章構成へ移行する方法

コンビのコップ重ねがあれば、文字カードを準備するだけで、連鎖語の学習ができます。

コンビのコップ重ねを事象に使い、かなトーク50音表で文を作ることもできます。

もちろん、お母さんや先生が描いた、お手製の絵カード🔴🔵🔶🔷🔺でも学習できます。

④食べる・飲むなどの動作の動詞も、写真と文字を対応させる学習で進めます。

見る範囲が限定される、平らな机上や、狭い画面で学習すると、分かりやすいです。

机、椅子、写真、絵カード、文字カード、かなトークなどを使いましょう。

写真は、プリントアウトできなくても、スマホで撮影した画像を見せるのでもいいですね。

動詞の学習の進め方

音声のない子どもは、身振りを使えるといいですね。

食器をイメージして食べる身ぶり、コップをイメージして飲む身ぶりなど、係わる大人が音声につけて使いましょう。

音声がなくても、文字が分かれば、「かなトーク」は1音ずつ発声してくれるので便利です。

性質を形容し、行為を動詞にすることを、家庭や学校生活で、一般化させます。

関係の定位

関係の定位は、6つあります。

①どんな何々(修飾語+対象)赤いリンゴ

➁誰がどうする(行為者+行為)私があげる

③何をどうする(対象+行為)リンゴをあげる

④誰が誰にどうする(行為者+受け手+行為)私が友達にあげる

⑤誰が何を誰にどうする(行為者+対象+受けて+行為)私がリンゴを友達にあげる

⑥誰がどんな何を誰にどうする(行為者+修飾語+対象+受け手+行為)私が赤いリンゴを友達にあげる

①の修飾語どんな何々は、「大小」+「色」+「名称」で学習しました。

➁➡⑥の行為者+修飾語+対象+受け手+行為まで、丁寧に学習を重ねていきます。

写真や絵事象および文字カードを使って、関係の定位=文の構造を学習します。

自閉症スペクトラムのかたは、話者の空間認知、話者交代の移動認知が弱いので、④⑤⑥の、関係の定位に苦労します。

助詞「を」「に」の混乱、動詞「あげる」「もらう」の混乱などがあります。

能動文・受動文の形成の方法

こそあど言葉が指している空間がわからなかったり、やりもらい文(能動文受動文)の授受関係がわからなかったりします。

こそあど言葉の形成の方法

行く・来る、行ってきます・ただいま、いってらっしゃい・お帰りなさい、誰から誰に電話です、誰が誰に電話をかける、何を何に入れる、何を何に乗せるなどを、正しく使えないことがあります。

絵カードで空間を整理して、文字カードで空間や行為の移動に名前をつける、整理された教材と学習が必要です。

こそあど言葉や、やりもらい文の学習でも、移動の矢印や実際の身振りが、事象と言葉を結びつける中継ぎになります。

語クラスの形成と分化

行為者の名称、対象の名称、行為の動詞、修飾語の形容詞・副詞など、それぞれの語クラスを形成します。

様々な語クラスを文字カード化し、写真事象に合わせて、クラス内の言語を選択して、文章を作ります。

行為者修飾語+対象受け手行為

私が あかいリンゴを ともだちに あげる

ママ 美味しいカレーを ぼくに 作った。

パパは 新しい 車を 家族のために 買ってくれた。

ぼく トーマスの本を お母さんに 買ってもらった。

語の選択と音声化

言葉の獲得過程は、事象(できごと)を言葉に変換することが、複雑になっていく、高次化されていく過程です。

赤ちゃんの言葉の発達過程とも言えます。

まずは、写真などで、仲間集めをして、名詞・形容詞・動詞など、様々な語クラスを形成します。

文字カードを使って、行為者+修飾語+対象+受け手+行為の語クラスの関係を定位し、文章に構造化します。

大きさ・色・形の多語連鎖➡誰が何を食べる・飲む➡誰がどんな何を誰にあげる・もらう、など、下の図1(文章化する)図2(文の意味に合うものを選ぶ)のように、位置が変わらない空間で継続的に学習すると、文の構造を獲得しやすいです。

中野尚彦先生考案の大小・色・形の連鎖語学習

文の構造が、脳内に形成されると、事象に合わせて語が選択され、文章を作れたり、音声化できたりします。

「文の獲得過程」の詳細な文献は、天野清『言語の獲得過程についての発達心理学的研究─言語獲得の条件・発達段階の基準の分析と標準化─』pp.141-167 国立教育研究所1985年を参照してください。

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 病院小児科で臨床発達心理士をしています。
 梅津八三の心理学、行動調整法、子どもの行動理解、育児、教材、ソーシャルスキル、介護、猫の行動について投稿中です。

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